菌根菌活性評価のための異なるポリリン酸定量法の特性比較

タイトル 菌根菌活性評価のための異なるポリリン酸定量法の特性比較
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2004~2008
研究担当者 大友量
小島知子
発行年度 2008
要約 アーバスキュラー菌根菌のリン供給活性の指標物質となるポリリン酸の定量法について、ポリリン酸キナーゼを用いる方法は測定感度に優れ、ポリリン酸エキソポリフォスファターゼを用いる方法は短鎖ポリリン酸の定量性に優れている。
キーワード 菌根菌、ポリリン酸(poly P)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ポリリン酸エキソポリフォスファターゼ(PPX)、リン供給活性
背景・ねらい アーバスキュラー菌根菌(以下、菌根菌)は宿主植物のリン吸収を促進することから農業上の活用が期待されている。ポリリン酸(poly P)は菌根菌がリンを輸送する形態であり、菌根菌の感染していない植物はほとんどpoly Pを蓄積しないことから菌根菌のリン供給活性の評価指標物質として期待できる(2005年度研究成果情報「菌根菌のリン酸供給活性指標としてのポリリン酸」)。しかし、従来の大腸菌由来poly Pキナーゼ(PPK)を用いたpoly P定量法では、感染している菌の種類によってはpoly Pの蓄積が明瞭に検出できない場合がある。そこでいくつかのpoly P定量法の特性を明らかにし、poly Pによる活性評価技術をより多くの場面に適用できるようにする。  
成果の内容・特徴
  1. PPK法ではpoly Pを高感度で特異的に定量できるが、短鎖poly Pを検出できない。一方、酵母のpoly Pエキソポリフォスファターゼ(PPX)を用いる方法は検出感度でPPK法に劣るものの、短鎖poly Pの定量性に優れている。TBO(トルイジンブルーO)法はタンパク質変性剤の影響を受けない簡易測定法として有効である(図1、図2、表1)。
  2. 鎖長と検出感度の関係では、一般に鎖長が短くなると検出感度が低下する。PPX法ではPPK法やTBO法では検出できない鎖長3~5のpoly Pも検出可能である(表1)。また、PPK法とPPX法の定量値の比(PPK/PPX値)はpoly P鎖長の指標となる。
  3. PPK法はGigaspora margaritaのpoly P定量にはある程度有効であるが、Glomus intraradicesのpoly P定量には必ずしも適さない。これは両菌株のpoly P鎖長の違いによると考えられる(表2)。
  4. G. intraradices感染タマネギにリン酸を施肥すると、一日以内に根のpoly P含量が増加するのみでなく、PPK/PPX値が増加し、鎖長の長いpoly Pの割合が増えたと考えられる(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. ここに示した試験は宿主にタマネギを用いたものであるが、菌根内のpoly P分析法は草本類一般に適用可能である。
  2. PPK、PPXともに市販されていない。ただし精製酵素を冷凍条件で長期保存する手法は既に確立しており、必要に応じて当研究チームで精製した酵素を頒布できる。
  3. ポリリン酸は不安定なので、回収したサンプルは氷冷し、出来るだけ早く超低温保存する。また抽出したポリリン酸はその日のうちに定量する。
  4. 菌根のpoly Pは、菌の種類や施肥により(表2)、あるいは宿主の生育ステージによって含量や鎖長が変化するので、感度や測定範囲の広さに優れるPPK法と短鎖定量性に優れるPPX法の両方を適用し、結果を総合的に判断することが望ましい。
図表1 227213-1.gif
図表2 227213-2.gif
図表3 227213-3.gif
図表4 227213-4.gif
カテゴリ 簡易測定 施肥 たまねぎ 評価法 輸送

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