制限走行路(トラムライン)の造成による代かき用水給水時間の短縮

タイトル 制限走行路(トラムライン)の造成による代かき用水給水時間の短縮
担当機関 北陸農業試験場
研究期間 1993~1997
研究担当者 足立一日出
増本隆夫
吉田修一郎
佐々木豊
大黒正道
澤村宣志
発行年度 1994
要約 制限走行路(トラムライン)が代かき用水給水時間に与える影響について評価するため、圃場における取水実態の調査を行い、そのモデル化を図った。制限走行路は水足の進行を速め、給水時間の短縮に寄与することが明らかになった。
キーワード 制限走行路(トラムライン)、モデル化、給水時間の短縮
背景・ねらい 重粘土水田において水稲生産の低コスト化を図るために、乗用型機械による水稲の播種と水田管理作業を可能とする制限走行路型作業システムが開発されている。この制限走行路は、機械の走行性だけでなく、用排水の管理にも有用であると考えられている。一般に、大区画圃場では代かき時の給水時間が長大になり、用水量も増加するが、制限走行路を造成した圃場においては、これらが水みちとして機能するため、給水時間が短縮されることが期待される。そこで、代かき用水給水時における水足の進行を、圃場の区画、浸透能や給水速度を組み込んでモデル化し、制限走行路の存在が給水時間(用水量)に与える影響を評価した。
成果の内容・特徴
  1. 一つの制限走行路は、農作業機の車輪が走行できるように、120cmの間隔で設けられた、幅30cm、深さ20cmの二つの溝から成る。その制限走行路が10m間隔で設置されている2圃場(50×200mおよび30×100m)と、制限走行路のない圃場(80×125m)において、代かき時の取水実態を調査した。制限走行路のない圃場の水足は水口から徐々に水尻に広がっていくが、制限走行路のある圃場のそれは、制限走行路が水みちとなって進行する(図1)。なお、水足の到達した面積を圃場短辺長で除して圃場の平均的な水足進行距離を求め、評価の対象とした。
  2. 代かき用水量を、1)下層土への浸透に関与する量、2)湛水深の増加に関与し水足の進行に寄与する量、3)作土の大きな間隙を充たす量、に分けて水足進行モデルを構築した。本モデルを図2に示す。モデルでは、1)下層への浸透速度V(mm/h)は、その点における水足到達後の経過時間T(min)の関数であるとし、2)湛水深H(mm)は、その点から水足までの距離L(m)の関数であるとしている。また、3)水足が到達した部分では、作土の大きな間隙量A(mm)は、即座に水で充たされるものとした。そして、上記モデルを用いて、ある時間までの給水量から、浸透量、湛水量及び水で充たされた作土の間隙量を計算し、その時間までの水足到達距離を求める。
  3. 作土の大きな間隙量Aは、圃場内の数カ所の実測値を考慮して決定し、また、浸透量のモデルの係数a、bは、圃場におけるシリンダーインテークレートの結果を参考に、適当な値に設定した。一方、湛水深のモデルの係数d、eは、計算結果が水足進行距離の実測値に適合するように決定した。なお、浸透の大小は係数a、bによって、制限走行路の有無は係数d、eによって評価される。以上の方法によって水足位置の変化を計算したところ、実測値と比較的良い一致が見られた(図3)。
  4. モデルを用いて制限走行路が代かき用水給水時間に与える影響を評価した(図4)。なお、係数d、eは、制限走行路がある圃場では0.5、0.2、ない圃場では0.5、0.95を用いた。また、係数a、bは、浸透が大きい例として、300、-0.7を、浸透が小さい例として、2、-0.3を使用している。給水速度が等しい場合、制限走行路によって、水足の進行が促進され、給水時間(代かき用水量)が約70~80%に短縮される。
成果の活用面・留意点 制限走行路を新たに造成する場合の代かき用水量の変化を算定することが可能となり、その結果は用水計画を策定する上での基礎資料となる。
図表1 227709-1.gif
図表2 227709-2.gif
図表3 227709-3.gif
図表4 227709-4.gif
図表5 227709-5.png
図表6 227709-6.png
図表7 227709-7.png
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カテゴリ 水田 水稲 低コスト 播種

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