水耕栽培における精密ろ過膜を用いた病害抑制技術

タイトル 水耕栽培における精密ろ過膜を用いた病害抑制技術
担当機関 農業工学研究所
研究期間 1997~1997
研究担当者 奥島里美
五十部誠一郎
佐瀬勘紀
大谷敏郎(現食品総研)
発行年度 1997
要約 水耕栽培の養液循環システムへの精密ろ過膜の応用を検討した。トマト青枯れ病菌を対象として 、栽培槽への病原菌阻止及び発病後の伝染遅延効果を見出した。この結果に基づいて、養液循環方式における低コストで保守も容易な管理技術を開発した。
背景・ねらい  水耕栽培は、連作障害がない、根圏部の環境制御がしやすく高収益化が可能である、作業がしやすいなどの特徴を有している。一方、養液を通じて病気が蔓延しやすいという欠点があり、養液の定期的な更新や栽培装置等の殺菌が行われている。しかし、養液の排出は肥料等を含むことから環境汚染が問題となっている。養液循環利用が出来れば排出養液も減少し経済性も増す。そこで、最近技術的進展がめざましい精密ろ過膜技術を導入することで、養液循環時の病害抑制と低コスト水耕管理システムの開発を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 実験室内の基礎実験等から精密ろ過膜の孔径、材質、構造の選択、基本設計を行い、図1に示すように、トマト青枯れ病菌に対しては孔径0.3μmの膜では菌の阻止率が99.9%、0.1μmでは100%で完全に除去できた。膜の構造の相違(スクリーンタイプ、ディプスタイプ)による阻止率の差はほとんどなかった。従って、実用的には孔径0.3μmの精密ろ過膜で十分トマト青枯れ病菌を除去できることが明らかになった。
  2. トマト青枯れ病汚染株を1株設置した後、ろ過を行うことで栽培槽内の菌数を低く抑え、他の株への感染を防止する方法を検討した(写真)。その結果、ろ過装置を使用した場合、5~15日の発病遅延効果を認めた(図2)。
  3. 上記の結果を踏まえ、実用規模の装置を試作し、実際のトマトの水耕栽培温室で実験したところ、76日間で4,400tあまりの養液をろ過(養液処理量:約2.4t/時)でき、約4.5tの養液廃液が系外に排出された。自動洗浄システムを併用することで、実験期間を通じて、膜の目詰まりなどのトラブルはなかった。この結果から十分に実用的な耐久性と操作性があり、しかも効率的な養液循環方式を実現できることが明らかになった。 

成果の活用面・留意点
(1) 膜処理法は、養液の除菌技術の一つとして、学会、業界、生産者の注目を集めている。環境保全型農業に有効な技術であり、養液排出規制が強化されつつあるオランダやアメリカにおいても活用が見込まれる。
(2) 青枯れ病伝染阻止までには至っていないが、発病の遅延効果は認められる。このため、発病株が認められた場合には、早期に除去するなどの対処が必要である。病害阻止のためには、栽培槽内での菌の伝播の解明や栽培槽の改善がさらに必要である。
図表1 227769-1.gif
図表2 227769-2.gif
図表3 227769-3.gif
カテゴリ 肥料 青枯れ病 環境制御 管理技術 管理システム 水耕栽培 低コスト トマト 連作障害

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