小さな魚道による休耕田への魚類遡上効果と休耕田の水質浄化能の評価

タイトル 小さな魚道による休耕田への魚類遡上効果と休耕田の水質浄化能の評価
担当機関 農業工学研究所
研究期間 1998~2000
研究担当者 大井節男
端 憲二
柚山義人
発行年度 1998
要約 排水路との間に落差のある休耕田に、水田で産卵・生息する魚類の遡上を可能にする小さな魚道を製作し、遡上効果を明らかにした。また、水質調査により、休耕田が水質浄化能を持つことを明らかにした。
背景・ねらい 農村の水辺には、魚類・昆虫類・両生類・鳥類などの多様な生物が生息し、豊かな自然が育まれていたが、戦後の農業技術近代化の過程で多くの生態環境が失なわれてきている。平地の水田地帯では、コイ・フナ類・ナマズ・メダカなど水田に産卵する習性を持つ魚類が少なくない。しかし、圃場整備では乾田化のために水田と排水路の落差を大きくとるため、圃場整備が完了した地域では、魚類の水田への遡上はほとんど不可能な状況にある。本研究では霞ヶ浦湖畔の休耕田に小さな魚道を設けて、魚類の休耕田への遡上行動を調べ、休耕田のビオトープとしての活用の可能性を検討した。また、併せて休耕田内での水質浄化能についても調査した。
成果の内容・特徴
  1. 試験地の概要と魚道の構造
    試験地は、霞ヶ浦湖畔の干拓地の外周に位置する1,100m2の休耕田であり、排水路と試験地との水位差は、かんがい期間中は通常0.3~0.5mである。なお、本地区の排水路は干拓地水田への用水路としての機能もあわせ持っている。今回製作した魚道は、各段の段差10cm、全幅60cmのうち越流幅30cm、プール長80cm、プール水深30cmを5段としたもの(写真1)である。
  2. 魚類の遡上・産卵(Fig.1)
    1997年及び1998年の調査によって、コイ・フナ類・ナマズ・ドジョウ・メダカなど河川下流域の水田地帯に生息する主要魚類の遡上を確認した。また、コイを除く上記4種について産卵を確認した。1998年の調査では、フナ類は4月30日以降の10日間で23ヶ所に産卵し、室内で24%(12/50)の孵化率を得た。
  3. 水質浄化能(Fig.2)
    試験地への流入水は窒素1mg/l 、リン0.1mg/lであったが、5時間の滞留で流出水はともに約50%除去された。また、流出水は流入水に比べ透視度が格段に向上した。窒素・リンの除去の大半は主に微小藻類から成る懸濁物質の除去によるが、試験地内の植生が懸濁物質のフィルターの役割を果たしている。
     以上の結果から、休耕田に小さな魚道を設けるだけで水田地帯の魚類の保全が可能であり、また、水質浄化もかなり期待できる。
現在の営農をそのまま維持しつつ、水田をビオトープとして活用するのは困難であろう。現在、全水田面積の3割とも言われている休耕田を活用するとともに、さらに、一歩すすめて積極的に湿地の造成を図ることも考えるべきである。
[その他]
研究課題名:生物保全機能の維持向上に必要な水量及び施設形態の計画手法
予算区分:特研「多目的」
研究期間:平成10年度(平成9年~12年度)
研究担当者:端 憲二、大井節男、柚山義人
成果の活用面・留意点 現在の営農をそのまま維持しつつ、水田をビオトープとして活用するのは困難であろう。現在、全水田面積の3割とも言われている休耕田を活用するとともに、さらに、一歩すすめて積極的に湿地の造成を図ることも考えるべきである。
図表1 227780-1.gif
図表2 227780-2.gif
図表3 227780-3.gif
カテゴリ 水田

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる