ローラーバケット型洪水吐減勢工の水理機能

タイトル ローラーバケット型洪水吐減勢工の水理機能
担当機関 農業工学研究所
研究期間 1998~1999
研究担当者 加藤敬
桐博英
常住直人
中西憲雄
中達雄
発行年度 1998
要約 ローラーバケット型減勢工は、あらゆる洪水量に対して常に下流河川の水位が高いという条件を有効に活用するものであり、本形式の減勢工により良好な減勢効果が発揮できる。下流河川水位、リップ角等を適切に設定すれば、静水池内の流速が短区間で軽減できるなど、基本的条件が確保できれば水平水叩き型よりも有利である。
背景・ねらい ダムの洪水吐減勢工は、下流河川の水位条件、地形地質条件等を勘案して、その形式を決定する。ローラーバケット型減勢工は、常に下流河川水位が跳水位より高いことが求められるため、我が国の農業用ダムにおいてはこれまで施工実績が少なく、その水理現象を具体的に明らかにした実験結果も極めて少ない。ここでは、Gダムについて水理模型実験により、ローラーバケット型減勢工の基本的水理現象を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. ローラーバケット型減勢工の特徴:リップ角0度(水平水叩き型)の場合、静水池底面の流速は、最大7.23m/sを示す(図1)。一方、ローラーバケット型では、バケット内では高速流であるものの、静水池は最大-2.37m/s(戻り流)と1/3に軽減される(図2)。従って、ローラーバケット型の方が、静水池長を短くできること、潜流(高速水脈が下流まで進む現象)を防止できること、流水力は流速の2乗に比例することから流水力が1/9に軽減され、底面に与える洗掘力も大幅に軽減されること等の有利性がある。
  2. リップ角と流況:ローラーバケット型減勢工における流れは、リップ角(バケット出口からの飛び出し角度)の違いによって異なった流況を示す。リップ角の違いにより次のような流況の変化が見られる。
    45度の場合:バケット波(リップ下流にできる水面隆起)が高く、この高まった水脈が静水池中央部に貫入するため、比較的速い流速が静水池底面部に残る。
    20度の場合:リップ角度が小さいためバケット波が低く、静水池表面を比較的速い流れが走る傾向が見られ、静水池全体にわたり水面の動揺が大きい。
    30度の場合:45度と20度の場合の中間的な流況を示し、底渦(リップ下流にできる回転する流れ)がよく形成され、減勢が行われている。
  3. 減勢が得られる下流水深:ローラーバケット及び静水池の敷高が高く、下流の水深を十分確保できない場合、バケットの流れは飛散状態(写真1)になる。単位幅流量28.5m3/s、フルード数Fr=9で流下する流れに対し下流水深を8.3mとした場合飛散状態となったが、水位を徐々に上げて水深を15.7mとした場合、完全な減勢(写真2)が得られる。
成果の活用面・留意点
  1. 下流の水深が十分にとれない場合、ローラーバケット型減勢工は、飛散状態になり採用は不適切である。
  2. 地形条件等により減勢工地点が深く掘り込まれるなど、下流の水深が大きくとれる場合は、ローラーバケット型減勢工の採用が効果的である。
図表1 227797-1.gif
図表2 227797-2.gif
図表3 227797-3.gif
図表4 227797-4.gif
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