比抵抗トモグラフィ法によるフィルダム堤体挙動監視システム

タイトル 比抵抗トモグラフィ法によるフィルダム堤体挙動監視システム
担当機関 農業工学研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 黒田清一郎
中里裕臣
長束勇
畑山元晴
民間(新技術研究開発組合)
発行年度 2000
要約 フィルダム堤体の築造時にあらかじめ堤体全体を囲んで電極を埋設し、比抵抗トモグラフィ法を用いて、フィルダム堤体の貯水による浸透状況を2次元的に監視できるシステムの開発を行った。
背景・ねらい 従来、築造後のフィルダムの安全監視は、堤体埋設計器の挙動観測や周辺地山ボーリング孔の水位観測等によって行われているが、堤体埋設計器は落雷や経年劣化により埋設後数年でその信頼性が落ちる場合がある。さらに、これらから得られるデータは点のデータであり、必ずしも異常箇所を特定するのに十分ではない。
そこで、地下の比抵抗分布を2次元的に把握できる比抵抗トモグラフィ法を用い、フィルダム遮水部およびその周辺部の温度分布や含水状態を比抵抗変化としてモニターすることによって、遮水部の浸透状況を2次元的に監視するフィルダム堤体挙動監視システムの開発を行った。
成果の内容・特徴
  1. 本監視システムは、フィルダム堤体の築造時にあらかじめ電極を埋設し、堤体全体を囲んで電極を設置する方法を採用した(図1)。
  2. 実ダムにおける実証試験を予定するにあたり、農業工学研究所敷地内に堤高105cm、堤頂長700cm、天端幅90cm、底幅300cmの小規模な試験堤体を築造し(図2)、貯水前と貯水14日後に比抵抗トモグラフィ法による計測・解析を行った。
  3. 試験堤体において堤体内の浸潤線の把握を試みた結果、貯水に起因して上流側の法面に沿って層状に比抵抗が低下している領域が見られた(図3のNS-2断面)。2%以上変化した領域をみると、法面表面から5~15cmまで水が浸透していることになる。
  4. 上記3.の結果は、現場において計測した盛土材料の透水係数(約1×10-5cm/s)、貯水後の経過時間(14日間)、および動水勾配と矛盾しないものである。オープンピエゾメータによる観測でも、上流側法面付近の間隙水圧は上昇しているが、その他の堤体内部では有意な変化は見られず、間隙水圧の挙動とも整合がとれている。
  5. 本監視システムにおいて、測定システムの高精度化を図ることにより、測定データの再現性が著しく向上した。また、探査対象領域を完全に取り囲むことによって解析精度の向上が見込まれる。さらに、埋設する電極は耐腐食性の金属片であり構造が単純で可動部がないため経年劣化が少なく、現状の埋設計器類と比較すると長期的な使用が可能である。
成果の活用面・留意点 周辺の地盤を含む3次元効果の影響について、さらに検討が必要である。。
図表1 227859-1.gif
図表2 227859-2.gif
図表3 227859-3.gif
カテゴリ 経年劣化

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