21.農業用水管理における水のプライシングの位置付け

タイトル 21.農業用水管理における水のプライシングの位置付け
研究期間 2001~2002
研究担当者 吉村亜希子
藤本直也
友正達美
発行年度 2002
要約 国際的議論が行われている水のプライシング (WP)は,水管理の改善に関し,水利費の徴収,マーケットメカニズムによる資源(再)配分という政策目的を果たすための手段である。モンスーン・アジアでは,歴史的な水管理組織による運営費徴収,合意形成がWPの働きを代替している。(独)農業工学研究所・農地整備部・用水管理研究室
背景・ねらい 水の経済財的側面に重点を置き,水に対して適正な価格をつけ (pricing),利水者がその代価を支払う仕組みを作ることによって,水資源の効率的かつ持続可能な配分と利用のための適切なインセンティヴを生み出そうとする,水のプライシング(water pricing:WP)が,世界銀行・経済協力開発機構(OECD)等の国際機関で盛んに議論されている。
この研究では,日本においてはなじみの薄いWP について,その目的や目指す政策目標との関係について明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. OECDは,加盟国で見られるWPのメカニズムを,8方式に分類(表-1)している。また,世界各国で行われている水利費の徴収は,(a)水供給に対するコスト回収,(b)節水への動機づけ,(c)再投資のための財源として行われている。OECDによる8方式の分類のうち(1)から(6)は,水利費の徴収を目的としたもの,(7),(8)は,(d)マーケットメカニズムによる水資源の(再)配分を目指したものと言うことができる(図-1)。

  2. WPの概念は,水が常に希少な経済財であることを前提としているため,特に,(b),(d)の点から,市場原理による料金水準の設定や,従量的な料金体系が高く評価される傾向がある。一方,モンスーン・アジアの伝統的水管理組織の運営費徴収は,地積割りで行われている場合が多い。日本で見られる,土地改良区の運営費,及び用水施設の維持管理コストの回収も,主に「地積割り課金」によって行われており(表-2),課金徴収の問題は生じていない。

  3. モンスーン・アジアのような年間に豪雨と渇水が繰り返される気候条件のもとでは,農業用水は,常に希少な経済財とはならないため,WPの概念になじまない。

  4. 日本の異常渇水時の臨時的な水資源の再配分は,農業用水・上水道・工業用水など各種の利水主体の協議により行われる。これは市場原理ではなく,利水者組織による,
    流域としての合意の形成を通じた効率性原理に基づくものである(図-2)。

  5. 以上の点から,水利用の課金を,画一的にWPの有効性から評価するのは適当ではない。気候,水資源,水利慣行等の地域性を踏まえた評価が必要である。

成果の活用面・留意点 モンスーン・アジアでは,農業用水管理を共同で行ってきた歴史があり,この歴史が文化的背景ともなっていることから,経済原理による水配分の公平さを目指すWPの適用に向けては慎重でなければならない。

カテゴリ コスト 水管理

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