26.園芸施設における温熱環境改善のための遮光技術

タイトル 26.園芸施設における温熱環境改善のための遮光技術
研究期間 2000~2002
研究担当者 奥島里美
佐瀬勘紀
石井雅久
発行年度 2002
要約 園芸施設で作物の生産性と人間の温熱快適性を両立するためには、遮光カーテンの利用が有効である。午前中の強光下でサラダナの光合成速度を高めた後に遮光すると、生育低下やチップバーン症状の発生が少なく、人間の温熱環境も改善できる。農業工学研究所・農地整備部・農業施設研究室
背景・ねらい 遮光カーテンは園芸施設の環境に多大な影響を及ぼす日射の制御が可能であり、遮光時に労働を行えば、作業者の熱的負荷を軽減できる。しかし、過度な遮光は作物の生育や品質を低下させるため、作物の生産性と人間の温熱快適性という二律背反の要素を両立できる遮光技術を開発する必要である。そこで、人工気象室を用いて夏期の強光・高温環境を再現し、遮光管理を想定した減光・降温管理がサラダナの生育や品質に及ぼす影響を調査した。また、代表的な温熱環境指標である湿球黒球温度を用いて、栽培環境を評価した。
成果の内容・特徴
  1. 処理区は、一日を通して全光時間帯の対照区と、減光する時間帯を作業時間と想定し、午前に減光を行う午前区、明期の中央に減光を行う日中区、午後に減光を行う午後区を設けた。なお、全光・減光時間帯の気温は、夏期に実測したプラスチックハウス2棟(無遮光、50%遮光)の平均気温から、全光時が27℃、減光時が24℃とした(図1)。

  2. 対照区と比べ、減光を行った処理区は葉数が減少したが、生体重には差がなかった。乾物重、乾物率、葉色は対照区と比べ、午前区、午後区が減少したが、日中区とは差がなかった。チップバーンの発生は、減光・降温管理によって抑制された(表1、図2)。

  3. 定植後8日目の対照区の光合成速度は、他区の全光時間帯のピークに近い値で推移したが(図3-A)、16日目になると対照区の光合成速度は他区の減光時間帯に近い値まで低下した。一方、日中区の光合成速度は、減光時間帯へ移行後の低下が少なく、再び全光時間帯へ移行した後は速やかに増加した(図3-B)。

  4. 日本体育協会では、湿球黒球温度が25~28℃になると熱中症発生の危険率が高まるため、警戒(積極的に休息)を要する温度域と定めている(図4)。全光時間帯の湿球黒球温度は27.3℃であり、不快で危険な温熱環境であったのに対し、減光時間帯は
    22.6℃であり、やや不快な温度域であるが、ほぼ安全な温熱環境であった(図1)。

成果の活用面・留意点 この成果は、サラダナを供試したことと、人工気象室を用いて遮光環境を再現していることに留意する必要があるが、夏期の日中に遮光を行って作業時間帯を設けることは、作物の生産性と人間の温熱快適性が両立した園芸施設環境の創出が期待できる。

カテゴリ 栽培技術

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