灌漑用調整池では滞留時間が長い時期にMicrocystisが増殖しやすい

タイトル 灌漑用調整池では滞留時間が長い時期にMicrocystisが増殖しやすい
担当機関 (独)農業工学研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 吉永育生
人見忠良
白谷栄作
長谷部均(九州農政局)
宮崎龍雄(千葉大学)
発行年度 2004
要約 灌漑用調整池において、藍藻の Microcystis が優占となってクロロフィルα濃度が上昇したのは、9月から10月であった。この時期は、水田灌漑用の水利用が停止したことにより、滞留時間が長くなった時期である。
キーワード
灌漑用調整池、藍藻、Microcystis、滞留時間が長くなった
背景・ねらい 全国の灌漑用ため池・調整池の約80%が富栄養状態にあり、これらの水域では藻類の過剰な増殖によって、景観の悪化など周辺環境への影響だけでなく利水上の障害を生じることがある。特に、毒素を有する Microcystis が優占種となって増殖すると問題が大きくなるため、増殖に至る要因を分析することが求められている。関東地方に位置する貯水容量560千m3、滞留時間が2~7日の調整池を対象として現地観測を行い、水質環境の季節変動を把握するとともに、Microcystis が優占しやすい環境条件の分析を行った。
成果の内容・特徴
  1. 調整池の集水域は小さく、水・栄養塩負荷の99%は湖を水源とする流入水によって供給されている。流入水のT-N濃度は1.1mg・ℓ-1、T-P濃度は0.1mg・ℓ-1でほぼ一定であり、溶存態の栄養塩濃度は夏季に上昇する傾向であった。
  2. 表層の日平均水温が15℃を上回るのが4月中旬から10月下旬、20℃を越えるのは5月中旬から10月中旬、25℃以上となるのは7月初旬から8月下旬の期間であった。
  3. 水利用量が多く滞留時間が短い7月には Volvox sp.が、水田灌漑用の水利用が停止して滞留時間が長い9月から10月には Microcystis sp.(図3)が、それぞれ優占となってクロロフィルα濃度が上昇した(図1、図2)。
  4. Microcystis が優占した時期は、水利用が少ないため流入する水量と栄養塩量が少ない。栄養塩が緩やかに供給される環境では、Microcystis が他の藻類との競合において優位となることが知られている。また、その他の環境要因を総合的に判断した結果、滞留時間が長い時期に Microcystis が優占して増殖するかどうかの指標として滞留時間が有効であることが明らかとなった。
なお、4月と5月にクロロフィルα濃度が上昇したのは、内部生産によるものではなく、流入水に高濃度の土粒子と珪藻が含まれていたためであった。また、冬季のクロロフィルα濃度の上昇は珪藻の増殖によるものであった。
成果の活用面・留意点 9月以降に灌漑用調整池の水を利用する場合、注意が必要となることを示唆する結果である。
図表1 228019-1.jpg
図表2 228019-2.gif
図表3 228019-3.gif
カテゴリ 季節変動 水田

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