ため池の地下水涵養機構の解明

タイトル ため池の地下水涵養機構の解明
担当機関 (独)農業工学研究所
研究期間 2004~2005
研究担当者 今泉眞之
石田 聡
土原健雄
発行年度 2005
要約 広島県中央のため池の多くは、地下水流動系において流動域に分布しており、ため池の山側から地下水が流入し、谷側へ地下水が流出する通過型ため池である。ため池の地下水涵養機能を、地下水観測、野外調査、流量観測とラドン濃度調査に基づく水収支式・ラドン物質収支式の解から明らかにした。
キーワード
ため池、地下水流動系、通過型ため池
背景・ねらい ため池は、農業用水の供給以外に、地下水涵養機能などの多様な機能を持つ地域資源である。ため池の地下水涵養機能は、ため池の底から浸透した水が周囲の地下水を涵養して、地域の水循環に寄与する機能と定義される。ため池の地下水涵養機能に関する研究例は少なく、本機能の有効性を議論するためには、多くの地域での検証が必要である。そのため、広島県豊栄町のため池を例に、ため池の地下水涵養機能を地下水観測、野外調査、流量観測とラドン濃度調査から明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. 広島県豊栄町には、177のため池(かんがい面積5ha以上)がある。本地域のため池は、流出域である椋梨川標高370~360mより30~40m高位に位置しているものが全体の70%を占める。また、山麓斜面と平坦地の境界に分布するタイプ(図1)が多い。これらのため池は、Born et al(1979: J. Hydrol., 43)の分類で、山側で地下水が流入し、谷側で地下水が流出する通過型池に区分される。
  2. ため池水位と下流井戸水位の1年間のモニタリングから、ため池水位と井戸水位の間には高い相関があることが明らかになった。また、沖の手ため池の下流崖下に貯水を水源とする湧水(ラドン濃度14Bq/L)を確認した(図2)。これらの観察結果は、ため池貯水が下流に地下水を涵養していることを示す具体的な証拠である。
  3. 調査地域の山麓斜面と平坦地の境界に分布する宇手飛上池と宇手飛下池の連珠ため池、山麓斜面と平坦地の境界線上に位置する上神池、六道池、沖の手池(図1)において、地表水の流出入量測定、水質、ラドン濃度調査を実施した。
  4. ため池への地下水流入量と流出量(下流への地下水涵養量)は、濱田・岸(2003: 水文・水資源学会誌、 16(4))が提案している流量収支式とラドン収支式の連立式に調査結果を代入した連立式を解くことにより計算できる(図3)。池内に湧出する地下水の量は1日当たり総貯水量の1~23%であった。また、4池中3池で池底からの地下水浸透も同時に起こっており、その量は1日当たり総貯水量の2~21%であった。
成果の活用面・留意点 ため池調査による地下水流出・流入量の推定値は、2004年9月30日時点の水収支である。年間の水収支を求めるためには同様の調査を定期的に行う必要がある。図3に示した個々のため池における地下流出・入量の違いは、後背地の地下水ポテンシャルの違いのほか、底質の状況、水深、貯留水の運用状況等によるが、どの要因がどのように影響しているかは、今後の課題である。
図表1 228057-1.gif
図表2 228057-2.gif
図表3 228057-3.gif
カテゴリ モニタリング

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