灌漑システムを対象とした耕作放棄地の分類と要因分析

タイトル 灌漑システムを対象とした耕作放棄地の分類と要因分析
担当機関 (独)農業工学研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 島 武男
小川茂男
吉迫 宏
発行年度 2005
要約 灌漑システムを対象に調査すると、水利条件を含めた耕作放棄の分析が容易になる。耕作放棄の空間分布に着目すると、圃場の全筆が耕作放棄されるタイプと、部分的に耕作放棄されるタイプに分類できる。この2つのタイプを比較すると、支線水路から農地までの距離、圃場の狭隘や平均勾配に大きな違いがみられた。このことから耕作放棄地のタイプごとに、その要因に応じた異なる対策が必要なことが分かる。
キーワード
背景・ねらい 耕作放棄地については、これまで営農や社会経済条件等の要因を分析した報告がされているが、本研究では用水路を含めた灌漑システムに着目して、耕作放棄地と水利条件との関連を分析した。また、耕作放棄地には、様々な形態やそれぞれの発生要因があり、それに伴う対策も異なる。本研究では中山間地域である熊本県矢部町の通潤用水の受益水田と灌漑システムを対象として調査し、耕作放棄地の空間分布による分類と分析を行った。
成果の内容・特徴 幹線水路-支線水路系と受益水田をGISデータ化し、連胆農地の基盤条件(土地条件、水利条件)を整理した(図1、表1)。阻害要因得点とは、地力保全調査で調査されたものであり、作土層の厚さ等土壌の圃場条件を表し、この得点が高いと圃場の土壌条件が悪いことを示す。灌漑システムの水利条件として、水源、用水量、水路材質、支線水路から連胆農地までの距離等があげられる。通潤用水において、ⅰ)水源は河川取水型、ⅱ)各支線水路への用水量は受益水田の面積割、ⅲ)幹線、一次支線の水路材質(コンクリート)は同等の条件である。支線水路から連胆農地をつなぐ二次支線水路は、連胆農地ごとに異なり、水利条件として二次支線水路距離を選んだ。なお、通作道は各連胆農地に確保されており、今回の分析では特に検討していない。
  1. 圃場の現地踏査より、耕作放棄地は全体型と部分型に分類できる。ここで「全体型」とは、連胆農地の全筆が耕作放棄されたタイプ、「部分型」とは連胆地内の一部が耕作放棄されたタイプと定義した(図2a、2b)。
  2. 218の連胆農地を「放棄なし」、「全体型」、「部分型」に分けて整理した(表1)。全体型は、二次支線水路距離が大きいこと、面積が小さいこと、勾配が急であるという特徴を示し、農地の基盤条件が悪いことが指摘できる。それに対し「部分型」は、むしろ「放棄なし」の農地の特性に近く、基盤条件が悪いわけではなかった。
  3. 二次支線水路距離/面積を水路管理の指標とし、図3に整理した。全体型の耕作放棄地では、指標値が高くなった。二次支線水路距離が長いと水路の管理距離も増えること、連胆農地の面積が小さいと所有者が少数となることから、各農家の水路の管理負担が増加し放棄につながる。本指標を用いることにより、耕作放棄地の要因の一つとして維持管理の困難さを定量化できる。
  4. 耕作放棄地の対策として、ソフト的対策(営農活動への助成、施設の維持管理への助成)とハード的対策(基盤整備)に分けることができる。部分型は、必ずしも基盤条件が悪いわけではないので営農活動への助成が主な対策となり、全体型は、施設への維持管理の助成、もしくは基盤整施が主な対策として整理できる。耕作放棄地のタイプごとに対策を選択することが重要である。
成果の活用面・留意点 本研究は一地区の事例調査であり、同様の視点で他地区で調査を行うことが重要である。
図表1 228060-1.gif
図表2 228060-2.jpg
図表3 228060-3.jpg
図表4 228060-4.jpg
図表5 228060-5.gif
カテゴリ 水田 中山間地域

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる