製糖副産物を利用した硝酸態窒素除去技術

タイトル 製糖副産物を利用した硝酸態窒素除去技術
担当機関 (独)農業工学研究所
研究期間 2004~2006
研究担当者 上田達己
凌 祥之
山岡 賢(現
資源循環研究室)
発行年度 2005
要約 製糖工場から出る副産物であるバガスと廃糖蜜を利用した硝酸態窒素除去(脱窒)技術である。バガス炭ペレットを脱窒菌の担体として、廃糖蜜を脱窒反応の水素供与体として用いることにより、最大約85%の全窒素を排水より除去できる。
キーワード
バガス、廃糖蜜、硝酸態窒素、脱窒、炭
背景・ねらい 沖縄県島嶼地域では、化学肥料・畜産・生活排水などに由来する地下水の硝酸態窒素汚染が顕在化している。また、製糖産業から出る副産物としてのバガス(サトウキビの搾りかす)と廃糖蜜の有効利用が課題となっている。そこで本研究は、現地で容易に入手できるこれら製糖副産物を用いて、簡易な硝酸態窒素除去技術を開発した。
成果の内容・特徴
  1. 粉砕したバガス炭と廃糖蜜を混合・ペレット化し、さらにペレットの強度を増すために再度炭化(800℃、2時間)し、アクリル製の円筒型装置に充填した(図1、2)。ここで廃糖蜜は、ペレットの強度を増す粘結剤として添加した。この装置に、硝酸カリウム・廃糖蜜・少量の畑地土壌を混合した基質を35日間流し、流出水を循環させることにより、土壌由来の脱窒菌をペレットへ担持させた。続いて25℃で77日間連続脱窒試験を行った(図2)。装置流入水の硝酸態窒素濃度を、ほぼ一定(約20mg/L)に保つ一方、水理学的滞留時間(HRT)と廃糖蜜希釈液濃度を様々な条件に変化させて試験した。各条件の前後に(週1回程度)装置を気泡で洗浄した。
  2. 結果として、HRTが0.8時間以上、かつ原水の炭素/窒素比(C/N比)がおよそ2~4の条件下で、窒素除去率85%以上が達成された(図3)。一方、他の条件下では、次の理由により窒素除去率が低下したものと考えられる。(1)HRTが短い(0.3~0.6時間)場合は、窒素負荷量が飽和脱窒速度(Monod式による試算で479g-N m-3 d-1)を上回った。(2)C/N比が2以下の場合は脱窒反応のための水素供与体が不足した。(3)逆に4以上の場合は原水の廃糖蜜中に含まれる有機・アンモニア態窒素が処理水中に多く残存した。なお、使用した廃糖蜜には、炭素27%、窒素1%が含まれる。
  3. また、C/N比が大きくなるほど、処理水中に残存する全有機炭素が多くなった(図4)。特に廃糖蜜由来の有機炭素は難分解性の着色物質を含み、濃度が高いと追加的な水処理などが必要となるため、なるべく残存有機炭素濃度は低い方が良い。
  4. 以上の結果から、最適な処理水質を達成するためには、廃糖蜜の適正な添加量(C/N比でおおむね2程度)を維持することが望ましい。
成果の活用面・留意点 本研究の成果は、製糖副産物が容易に入手できる地域で、下水の3次処理などにおける簡易な硝酸態窒素除去技術として適用が期待される。ただし、適用に際しては、処理水中に残存する、廃糖蜜由来の有機/アンモニア態窒素、難分解性有機物、リンなどへの対策が必要である。例えば、処理水を灌漑用水として再利用し、残存物質を土壌に吸収させるなどして、周辺の水環境に悪影響を及ぼさないよう留意する。また、長期間の連続運転に際しては、汚泥等による装置の目詰まりによる性能低下を防ぐため、気泡などにより定期的に装置を洗浄することが必要となる。
図表1 228063-1.gif
図表2 228063-2.gif
図表3 228063-3.gif
図表4 228063-4.gif
カテゴリ 肥料 さとうきび

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