タイトル |
汚泥層による畑地排水中の硝酸性窒素の除去技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
山岡賢
上田達己
凌祥之
廣瀬裕一
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発行年度 |
2006 |
要約 |
農業集落排水施設から廃棄される汚泥は、水処理プロセスから引き抜かれ数ヵ月経ても高い脱窒能力を示す。このため、畑地排水等の硝酸性窒素汚濁水を汚泥層に浸透させることで、容易に硝酸性窒素を除去できる。
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キーワード |
汚泥、畑地排水、硝酸性窒素、脱窒、透水係数、酸素消費
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背景・ねらい |
硝酸性・亜硝酸性窒素(NOX-N)は、環境省の地下水質測定調査で環境基準項目中で最も高い超過率を示している。NOX-N汚染の原因の1つとして畑地からのNOX-N溶脱があり、畑地排水の浄化に対応した簡易で確実なNOX-N除去技術が求められる。 本研究では、簡易なNOX-N除去技術開発のため農業集落排水施設から廃棄される汚泥の脱窒能力に着目し、汚泥を層状にして利用することを考え、硝酸性窒素(NO3-N)除去能力を調査した。
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成果の内容・特徴 |
- 農業集落排水施設から採取した汚泥2l(濃度12,800mg・l -1)を図1のカラム模型に注入すると、余剰な水分が排出され砂層上に厚さ5.6cmの層を形成した。なお、カラム模型は20℃の恒温室に設置した。
- 汚泥層上に3回注入した硝酸カリウム(KNO3)水溶液のNO3-N濃度と同水溶液が汚泥層を浸透した後の全窒素(T-N)濃度は図2のとおりであった。KNO3水溶液は1回約950mlを注入し、前回注入したKNO3水溶液の浸透が終了する毎に新たに注入した。浸透水も注入毎にサンプリング・分析を行った。注入したKNO3水溶液のNO3-N濃度が平均約59mg・l -1に対してT-N濃度は平均約13mg・l -1(ほとんどがNO3-N)と汚泥層浸透の間にNO3-N除去が行われた。
- 汚泥層の上部にKNO3水溶液を注入した際、カラム内の水位の経時変化は図3のとおりとなった。透水係数を算定すると、10-6cm・s-1(20℃)程度と粘土と同程度の難透水性を示した。このことは、NO3-N汚濁水が汚泥層を浸透するのに時間を要し、汚泥層内での脱窒反応時間が確保できることを示す。
- 汚泥は水処理プロセスから引抜かれ数ヵ月経ても106~108MPN・g-1MLSSの脱窒菌を有し、高い潜在的な脱窒能力を示す。また、汚泥は6割以上が有機物(MLVSS)で脱窒反応の水素供与体となる。なお、MPNは最確数、MLSSは活性汚泥浮遊物質、MLVSSは活性汚泥有機性物質を示す。
- 汚泥の酸素消費量は図4に示すとおりであり、グラフの傾きから酸素消費速度は5.9~16.8mg・g-1MLVSS・d-1(20℃)である。汚泥層及び同層を浸透するNO3-N汚濁水は、容易に嫌気状態となり、脱窒反応が発現する。
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成果の活用面・留意点 |
- 農業集落排水汚泥は6割程度が利用されず廃棄されており、畑地排水のNO3-N除去への適用は資源の循環利用の面からも期待される。
- 汚泥は、事前に間欠曝気することで汚泥が含有する窒素分の溶出を抑制できる。
- 汚泥層からの有機物、リンや大腸菌などのNO3-N以外の汚濁物質の流出が懸念されるので対策が必要である。例えば、汚泥層の支持層にこれら汚濁物質の吸着能を持たせるなどして、流出を防止することが考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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