複合トレーサーを用いた亀裂性岩盤における地下水流動調査手法

タイトル 複合トレーサーを用いた亀裂性岩盤における地下水流動調査手法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2007
研究担当者 吉本周平
今泉眞之
石田 聡
土原健雄
発行年度 2007
要約  複合トレーサー(概査で環境トレーサー、精査で人工トレーサー)を用い、亀裂性岩盤地域における地下水流動を効率的に把握する。本手法を適用することで、卓越した亀裂面に支配される地下水の流動方向、流動特性を特定することが可能である。
キーワード 亀裂性岩盤、岩盤斜面、トレーサー試験、地下水、破過曲線
背景・ねらい  中山間農業地域には広範に岩盤が分布しており、地すべり地における地下水排除工設計、ダムサイトの湛水時における基礎岩盤の漏水診断等といった地下水問題において、卓越流の浸透経路である水みち、流動特性を正確に把握することは非常に重要である。しかしながら、これまで効率的な亀裂性岩盤の地下水流動調査法は示されていなかった。ここでは、亀裂構造を考慮した地下水流動特性を明らかにするために、概査で環境トレーサー、精査で人工トレーサーを用いた地下水流動調査手法のフローを示すとともに、岩盤斜面で実施した精査段階の例を示す。
成果の内容・特徴
  1. 亀裂性岩盤における地下水流動調査手法を図1に示す。本手法では、天然中に地下水に存在する溶質である環境トレーサー、人工的に地下水に投入する人工トレーサーと特性の異なるトレーサーを用いる。概査では、地下水に含まれ地表水にほとんど含まれない放射性同位体である222Rn等を用い、地下水が流動しているかどうかを判定する。次いで精査段階では、適切な調査地点・観測期間を設定し、効率的に人工トレーサー試験を実施する。人工トレーサー試験では、トレーサーの投入と複数の採水地点での連続観測を行う。これにより地下水流動経路を推定するとともに、濃度と経過時間の関係を示す破過曲線の形状による地下水流動タイプの判別、数値解析を行い、卓越した亀裂面に支配される地下水流動方向、流動特性を特定する。
  2. 地下水の222Rn濃度が低い場合、浸透した地表水は地下で放射平衡に到達する前に流出しており、地下水は亀裂を水みちとした卓越流と予想される。このような亀裂性岩盤が対象の場合、流速が大きく浸透経路が短い試験に適する蛍光染料をトレーサーとして選定する。試験に用いる蛍光染料は環境影響が極めて小さく、また赤・青・緑色系の蛍光染料は異なる固有波長を持つため、3種同時に用いた試験が可能である。それぞれのトレーサー検出地点から地下水流動方向を推定する(図2)。
  3. 亀裂性岩盤を通過するトレーサーは、採水地点において急激な濃度上昇とその後の緩やかな濃度低減を示すため、破過曲線の形状から、亀裂性岩盤・多孔質媒体のいずれを通過したかを判定できる(図3)。亀裂を考慮した数値解析により破過曲線は再現され(図3)、流速に先行して流れ方向に濃度がぶれる度合を示す縦方向分散率(50m)及び亀裂開口幅(0.59mm)を推定することが可能である。
  4. 流動方向、複数のトレーサーの到達、到達時間・濃度の違いより、地すべり地冠頭部の地下水流動は図4のようにモデル化できる。岩盤斜面内の地下水は、片理方向と同じ傾斜角の小さい亀裂ではなく、構造運動により生じた傾斜角の大きい新しい亀裂を主要な水みちとし、地形勾配に対して斜行して流動する。
成果の活用面・留意点
    本調査手法は、農地保全のための地すべり地現場での地下水排除工の設計調査、ダムサイトの基礎岩盤における漏水診断調査への適用が可能である。
図表1 228171-1.gif
図表2 228171-2.gif
図表3 228171-3.gif
図表4 228171-4.gif
カテゴリ 中山間地域

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