地下ダム流域における地下水質変動の予測法

タイトル 地下ダム流域における地下水質変動の予測法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 吉本周平
今泉眞之
石田 聡
土原健雄
発行年度 2007
要約  地下ダム流域における水質保全に資するため、地下水質の将来変化を簡易なモデルによって予測する手法である。本モデルは、事業計画で使用されたタンクモデルを水収支計算に用いることで、僅かなパラメータ設定によって比較的良好な予測結果が得られる。
キーワード 石灰岩、洞くつ、地下水、硝酸性窒素、水質予測モデル
背景・ねらい  南西諸島では、1980年代後半から琉球石灰岩を帯水層とする国営地下ダム事業が開始され,完了地区では,地下ダムを水源とした灌漑の効果が着実に現れつつある。しかし,近年,南西諸島では地下水中の硝酸性窒素濃度の上昇が問題となっており,地下ダム流域における水質保全対策を講じるためには、水質変動を予測するモデルの開発が必要である。
 琉球石灰岩などの洞くつや亀裂を有する帯水層では,数十メートル離れただけで降雨に対する地下水位および水質の変動パターンが全く異なることが珍しくなく,従来の多孔質媒体を仮定した厳密なモデルを琉球石灰岩に適用するためには、多くの水理定数を設定する必要があるなど、困難な点が多い。このため、洞くつ中における水位・水質変動メカニズムと窒素の化学変化を組み込んだ単純な構造の地下水質予測モデルを用いて,地下ダム流域の水質変動を簡易にかつ精度よく予測する手法を開発した。
成果の内容・特徴
  1. 琉球石灰岩分布地域のボーリング孔で観測された地下水位の変動パターンは、降雨に反応して急激に変動するもの(タイプ1)と緩やかに変動するもの(タイプ2)に類別される(図1)。同様に、湧水中の硝酸性窒素濃度の変動パターンは、大きく変動するもの(タイプa)と、緩やかに変動するもの(タイプb)に類別される(図2)。タイプ1の地下水位変動およびタイプaの硝酸性窒素濃度変動を示す地点は洞くつの周辺に位置しており、洞くつの存在がこれらの変動特性に影響していると考えられる。
  2. 地下水質予測モデルの水収支サブモデルとして、並列タンクモデルを採用している(図3a)。上部2段のタンクは不飽和帯における鉛直浸透を表し、1段目から3段目へ直接到達するパイプを設けることで洞くつを通過する素早い間隙流を表現できる構造である。3段目のタンクは飽和帯における地下水流動を表し、側方流動の流量は隣接する小流域との地下水位の差からダルシー則によって計算される。
  3. 地下水質予測モデルの窒素収支サブモデルとして、木方・イスラムモデルを採用している。モデルで考慮する窒素諸形態と生物・化学反応との相互関係を図3bに示す。それぞれの相互関係については、計算式及びパラメータを文献値等を参考に設定する。
  4. 地下水質予測モデルによって計算された硝酸性窒素濃度の日変動を、湧水地点での水質観測結果と併せて図4に示す。長期的な変動傾向については、1990年代半ばからの減少傾向を概ね再現しているように、予測モデルとしての使用に耐えうる良好な結果が得られる。
成果の活用面・留意点
  1. 地下ダムを施工中・計画中の地区では、地下ダム貯留量予測のためのタンクモデルを水収支サブモデルとして使用することで、水質の将来予測を簡易に行うことができる。
  2. 窒素収支サブモデルに与えるパラメータの大半は、文献値をそのまま採用しても予測可能である。しかし、パラメータ値を観測によって決定すればより精度が向上する。
図表1 228173-1.gif
図表2 228173-2.gif
図表3 228173-3.gif
図表4 228173-4.gif
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