多面的機能に配慮した水路システムの基本計画作成手法

タイトル 多面的機能に配慮した水路システムの基本計画作成手法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 吉迫宏
小川茂男
島 武男
発行年度 2007
要約  GISを活用して利水機能に加え,水質保全機能,魚類生態保全機能,及び親水機能等の多面的機能を連係して評価する手順により,各機能のバランスや,水路システムのどの区間で多面的機能に配慮するかといったゾーニングを考慮した水路システムの基本計画を作成できる。
キーワード 水路システム、利水機能、多面的機能、基本計画
背景・ねらい  多面的機能として水質保全機能,魚類生態保全機能等の個別研究が進展し,深められている。一方で,水利施設の配置や流速,水深,水路材質といったパラメータは利水機能だけではなく,各機能との関連も深い。そのため,技術者の立場から多面的機能に配慮した水路システムの基本計画を行う場合,利水機能と多面的機能のバランスを図ることが求められる。そこで,利水機能と多面的機能を連係させ各機能を総合的に評価し,ワークショップ等で水路システムの基本計画策定を行う際に,合意形成を支援するための手法を提案する。なお,本研究では多面的機能として,水質保全機能,魚類生態保全機能,親水機能を対象とした。
成果の内容・特徴
  1. 各機能の連係的評価の手順を,Step1:水路システムのGISデータベースの作成 Step2:定性的評価 Step3:定量的評価 の三つのStepに分ける(図1)。
  2. GISデータベースは,水路線や,利水機能施設,水利施設要素,汚染源,ハビタット(魚類の良好な生息空間),親水空間の位置等のレイヤー(データ層)で構成される(図2)。水路線レイヤーには,材質や水路幅等の属性が同じ区間で区切られ,粗度係数や勾配等のデータが整理される(表1)。利水機能施設レイヤーには,頭首工の水源や分水工の分水方法等の利水機能に関するデータが整理され,水利施設要素レイヤーにはゲートや堰といった水利施設の構造に関するデータが整理される。これらのレイヤーから,定性的評価のための診断図が作成され,さらに,水路幅,粗度係数等のデータより定量的評価が行われ,診断図と計算結果がGIS上に表示される。
  3. 定性的評価では,水路システム全体を鳥瞰することにより,各機能の特性を的確に把握する。このための凡例を作成し,各レイヤーの属性に応じた凡例を表示することによって,診断図が作成される(図3)。多面的機能の各機能に関しても,特性を把握するための凡例を作成し,GISデータベースから水質保全機能診断図,魚類生態環境診断図,親水機能診断図が作成される。
  4. 水路線レイヤーの勾配,粗度係数等の属性や水利施設要素レイヤーの堰高,ゲート開度等の属性から,まず各水路区間の流量,水深等の利水機能の定量的評価を行う。この計算結果を受け,水質保全機能評価のためのCOD濃度を推定する(図4)。算出された流速,水質は魚類生態保全機能や親水機能においても,重要な評価項目となる。水路システム内において,魚類性保全機能や,親水機能に配慮する区間に関しては,水利施設の配置等を検討し,さらに各レイヤーの水路幅,材質等の属性を変更して,再評価を行う。これらのステップを繰り返すことにより(図1),多面的機能に配慮した水路システムの基本計画を行うことができる。
成果の活用面・留意点
     本研究で提案した手順は,利水機能だけでなく,水質問題,生態環境,親水といった個別課題に対して,お互い機能間の関連を議論し,合意形成を図るための手法であり,そのための専門知識を持った合意形成を図る技術者が重要である。
図表1 228177-1.gif
図表2 228177-2.gif
図表3 228177-3.gif
図表4 228177-4.gif
図表5 228177-5.gif
カテゴリ データベース 水管理

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