北米におけるBSE発生の牛肉市場に及ぼす影響に関する定量分析

タイトル 北米におけるBSE発生の牛肉市場に及ぼす影響に関する定量分析
担当機関 国際政策部
研究期間 2004~2004
研究担当者
発行年度 2004
背景・ねらい 近年,日本の農業・農産物貿易をめぐる環境は急速に変化している。特に,WTO,FTA等の国際交渉の進展に加え,2003年のアメリカ,カナダにおけるBSE(狂牛病)の発生およびそれに伴う食品安全・動物検疫上の貿易規制措置発動等により,世界の牛肉の貿易構造や各国の牛肉の市場に大きな影響を及ぼす環境変化が生じつつある。
こうした変化の実態を,最新の世界食料需給モデルを用いた影響分析を行うことによって分析し,我が国の国際交渉対応や農業政策立案の基礎資料として活用することとする。
2003年5月にカナダにおいて,また2003年12月にアメリカにおいてBSEが発生し,これらの牛肉の主要輸出国から,日本,韓国といった主要輸入国への牛肉の輸出が事実上ストップしている状況の経済的影響を,OECD(経済協力開発機構)が加盟国の協力を得て開発した世界食料需給モデルであるAGLINKモデルを独自に改良し,シナリオ予測を実施する事により,測定を試みた。ただし,リスクアナリシス等の技術的な観点は,本研究の対象外とした。
成果の内容・特徴
  1. 世界の牛肉市場は大まかに言って2つの市場に分割される。1つはFMD(口蹄疫)清浄国,もう1つはFMD非清浄国である。前者は主に太平洋地域,つまり,オーストラリア,ニュージーランド,カナダ,アメリカ,メキシコ,日本,韓国などの国々で構成されている。後者はEU,中南米などの国々で構成されている。また,FMD清浄国の中では,NAFTA3国(カナダ,アメリカ,メキシコ)が,牛肉の貿易を含め,全ての市場統合の動きを強めている。
  2. 2003年のカナダとアメリカにおけるBSEの発生により,日本,韓国といった大輸入国は直ちにカナダとアメリカからの牛肉の輸入を禁止した。2005年3月3日現在,禁輸措置をとっている輸入国は,日本,韓国を含め,35ヵ国である。これらの大手の顧客を失った結果,カナダとアメリカは,実質的にNAFTA3国以外には輸出が不可能になった。
  3. これらの禁輸措置に,市場は素早く反応した。すなわち,オーストラリア産牛肉の輸出価格が大きく上昇した他,日本国内における和牛や去勢乳牛の枝肉卸売価格は,2003年に比較して2004年は大幅に上昇した。
  4. AGLINKにおいてこのBSE発生の影響を分析するため,まず,2003年春に公表された,BSE発生の直前の状態を反映している「OECD農業見通し」において使用されたAGLINKモデルとその予測結果を,シナリオ分析を行う際のベンチマーク(基準)として使用することとした。そして,シナリオを設定するため,このモデルを修正し,アメリカ,カナダが太平洋市場から隔離されたBSE発生後を表す修正版モデルを準備した。そしてこの修正版モデルによる予測結果をベンチマークと比較することにより,BSE発生の影響を測定した。修正モデルでは,アメリカの牛肉輸出量を外生変数に変更した。その上で,2004年および2005年はアメリカのNAFTA外への牛肉の輸出は完全に停止し,その後徐々に回復するという設定を行った。
  5. このシナリオ分析の結果,太平洋市場における牛肉の国際価格は,アメリカおよびカナダの市場からの退出により,2004年および2005年の両年において大幅に上昇するが,その後,アメリカが太平洋市場への輸出を徐々に回復することにより,国際価格は段々落ち着いてくると予測できる。アメリカの今回のBSEによる牛肉輸出量の減少額は,イギリスの1996-98年のBSE発生による牛肉輸出量の減少額に比較して,その規模ははるかに大きい(約10倍)と見積もれることが判明した。この他,アメリカ国内の牛肉のだぶつきによる価格の低迷や,日本,韓国など輸入国における価格の上昇,他の有力な輸出国であるオーストラリアの輸出増加などの計測が可能となった。
図(牛肉の国際価格(太平洋市場)の予測)
図表1 228544-1.jpg
カテゴリ 乳牛 輸出

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