耳石含有微量元素を用いた魚類回遊履歴推定

タイトル 耳石含有微量元素を用いた魚類回遊履歴推定
担当機関 中央水産研究所
研究期間 2000~2000
研究担当者 久保田洋
大関芳沖
木村量
発行年度 2000
要約 アメリカ産カタクチイワシの耳石に含まれるストロンチウムとカルシウムの比Sr:Caが環境中の塩分と正の相関があることを利用して、アメリカ東海岸Chesapeake湾内の低温分域で採集されたカタクチイワシが湾内の高温分域から回遊してきたことを明らかにした。
背景・ねらい 資源変動機構を解明する一環として、耳石を用いて個体の過去の回遊履歴を推定する手法を開発する。環境中の塩分濃度を反映する耳石中のSr:Ca比を用いて、水平的な塩分勾配が恒常的に存在する湾内において広い範囲で多量に分布している当歳魚の回遊状況を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 耳石中のSr:Ca比は耳石を研磨後、電子線プローブ微小部分析によって測定した。カタクチイワシ当歳魚の耳石縁辺部のSr:Ca比は採集時の塩分と正の相関があり(P0.001、r2=0.54)、この関係を利用して耳石のSr:Ca比から耳石形成時の生息塩分推定が可能となった。
  2. 湾内の塩分の違う5ヵ所(5,11,15,21,28psu)でカタクチイワシ当歳魚(体長22-45mm)を採集し、各個体の耳石の成長軸にそってSr:Caの履歴を調べた。その結果、湾南部の高塩分域(21,28psu)で採集された個体のSr:Ca比は、孵化時から採集時まで0.8×10-3(15psuに相当)以上の値を示した(図1A)。一方、中~低温分域(5,11,15psu)で採集された個体では、その値は初め0.8×10-3以上であったが、約50日後は0.8×10-3以下を示し、高温分域から低温分域への移動が示された。(図1B)。
  3. 各個体の日齢から割り当てた誕生日のある月(6または7月)の湾内塩分分布図を作成し、各個体の耳石核付近のSr:Ca比から推定した孵化時の塩分濃度地点を、その分布図上にあてはめた。その結果、5,11,15psuで採集された個体では、湾の南から北への移動が示された(図2)。
成果の活用面・留意点 耳石は一度形成されると再吸収されない性質を持つため個体の履歴を調べるのに適している。含有微量元素分析を耳石日周輪解析と組合せて詳しく調べることができる。
現時点では耳石中の微量元素濃度を決定する要因について、まだ完全には明らかになっていないが、この方法を応用することで、日本周辺に生息する魚種でも沖合回遊群と地方個体群を分離できることが期待され、資源管理に一層の精度向上を図ることが可能となる。
図表1 229173-1.gif
図表2 229173-2.gif
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