タイトル |
日本型食生活,魚食が動脈硬化症を予防するメカニズムの解明 |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所 |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
佐野陽子
松嶋良次
石原賢司
村田昌一
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発行年度 |
2004 |
背景・ねらい |
- 我が国では,食生活の欧米化にともない高齢者の脳梗塞,虚血性心臓疾患などの循環器疾患の罹患率が増加しており,健康に老いるために日本型食生活,魚食の健康への役割を科学的に解明が重要である。
- 循環器疾患の予防には血液性状を正常に保つことが必要であるが,これらに有効な食事成分はほとんど明らかにされていない。
- 魚食による動脈硬化症の予防作用に関するヒト臨床データには,高度不飽和脂肪酸の機能だけでは説明できない他の作用が関与している可能性が指摘されている。
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成果の内容・特徴 |
5%魚油(EPA28%含有)食(F),20%イワシタンパク質食(S),および5%魚油+20%イワシタンパク質食(F+S)(表1)を摂取したラットの血液凝固・線溶系に関する因子を測定し,以下の知見を得た。
- Fはコントロール食(魚油,イワシタンパク質ともに無添加食(コントロール;C)に比較して外因系血液凝固時間を有意に延長した。Sは内因系血液凝固時間を延長する傾向は見られたが,有意差はなかった。しかし,F+Sは外因系,内因系ともに凝固時間時間を有意に延長させた(表2)。
- Sは血液凝固時間を延長させる(血液凝固抑制作用)が,固まった血液を溶かす機構(線溶系)にはほとんど影響を与えなかった(表3)。
- Sは血管壁や血中で形成される血栓を溶かす機構(線溶系)を活性化させ,この作用はF+Sでも確認された(表3)。
以上の結果から,魚(イワシ)食による動脈硬化症,脳梗塞,虚血性心臓疾患などの循環器疾患の予防作用は魚油の血液凝固抑制作用とタンパク質の線溶系活性化作用の複合的作用であることが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
日本型食生活,魚食の健康への役割が以下の点について明らかとなった。
- 食品素材の機能性は1つの成分にだけ由来するものではなく,食品素材に含まれるいろいろな機能性成分の複合的作用で発揮されている。
- 日本型食生活は豊富な食素材を組み合わせ,いろいろな調理法で色,形,味を楽しむ文化であり,かつ食品の機能性を有効に発揮させるための日本人の知恵である。
- その中で魚介藻類は日本人の健康の維持に重要な食素材である。本研究の成果は日本国民の健康,魚介藻類の消費拡大による水産業,水産加工業の振興に寄与する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
加工
機能性
機能性成分
消費拡大
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