タイトル |
フコイダンとワカメのラット血液凝固・線溶系に与える影響の比較 |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所 |
研究期間 |
2002~2002 |
研究担当者 |
松嶋良次
石原賢司
村田昌一
|
発行年度 |
2005 |
背景・ねらい |
- 我が国では,食生活の欧米化に伴い高齢者の脳梗塞,虚血性心臓疾患等の循環器疾患の罹患率が増加している。
- 循環器疾患の予防には血液の性状,特に血液凝固・線溶系を正常に保つことが必要であり、特に血管を詰まらせる血栓を溶かす作用、線溶系を正常化させることが重要である。
- しかし、これらを正常に保つために有効な食事成分はほとんど明らかにされていない。
- これまでフコイダンの血系凝固抑制作用が報告されているが、食生活を考慮して、フコイダンを含むワカメを丸ごと摂取した時にも同様の効果が現れるかを検討する必要がある。
|
成果の内容・特徴 |
フコイダン(シグマ社製)を0.5%(F0.5)及び1%(F1.0)を含む食餌及び同量のフコイダンを含むと想定した5%(W5)及び10%(W10)食(全5群)でSD系雄系ラットを3週間飼育後、血液凝固・線溶系に関する因子を測定し,以下の知見を得た。
- 血液凝固時間はF0.5食は基本食と差はなかったが、F1.0食は有意に延長させた。一方、W10食は基本食に比較して有意に延長させ、延長の程度はF1.0食に比較し大きかった(表2)。
- 線溶系因子ではF1.0食がプラスミン-プラスミンインヒビター複合体(PIC;線溶系亢進の指標の一つ)のみが基本食より有意な上昇を示したが、他の因子には影響を与えなかった(表3)。
- 一方、ワカメ食はW10食で組織型プラスミノーゲンアクチベーター活性の上昇、プラスミンインヒビター複合体量の上昇、フィブリン分解物(D-ダイマー)の上昇、さらにその低下が動脈硬化症等の予防の指標となるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター活性の低下が観察された(表3)。
以上の結果から、フコイダンは血液凝固時間の延長のみが認められたが、ワカメの摂取は血液凝固時間の延長とともに線溶系の亢進作用も確認された。血栓形成抑制には純化したフコイダン(製剤等)を摂取するよりもワカメを丸ごと摂取することがより効果的である。
|
成果の活用面・留意点 |
日本型食生活の主要食品成分である海藻の役割が以下の点について明らかとなった。
- 食品の機能性を効果的に発揮させるためには一成分を摂取することよりも食品素材を丸ごと摂取することで効果が高まる可能性がある。
- その中で魚介藻類は日本人の健康の維持に重要な食素材である。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
機能性
|