台風がトコブシの放卵放精を誘発する

タイトル 台風がトコブシの放卵放精を誘発する
担当機関 浅海増殖部
研究期間 2006~2008
研究担当者 鬼塚 年弘(中央水研)
堀井豊充
発行年度 2008
背景・ねらい
トコブシの漁獲量は1980年代以降減少傾向にあり、資源量が増加しない主な原因は天然稚貝の発生量の低迷にあると考えられている。効果的な資源増殖を図るため産卵生態を解明し、それに基づく資源管理方策を講じる必要がある。放卵放精型の繁殖を行うアワビ類では、受精成功のため配偶子の放出を同期させる外部刺激が必要であると考えられている。本研究では天然海域でトコブシの放卵放精を誘発する要因について検討した。
成果の内容・特徴 神奈川県長井地先に設定した調査点において、毎回3個ずつ転石を採取し、着底後1週間以内と考えられる殻長500 μm以下のトコブシ(着底初期稚貝)を数年間にわたり定期的に採集した。また、放卵放精時期の特定のため、同所で漁獲されたトコブシ成貝の生殖腺指数(GI)を定期的に測定した。7~9月にかけて成熟した成貝は 様々な物理環境(水温、月齢、潮汐等)を経験したが、放卵放精を示唆するGIの減少は台風の通過後のみ認められた。また、着底初期稚貝の出現も台風通過直後のみに限られた。これらの結果から、トコブシでは台風通過により放卵放精が誘発されると考えられた。台風通過に伴う時化は転石上の浮泥を除去し、浮遊幼生にとって新たな着底場所を作り出す。トコブシは台風通過と同期して放卵放精を行うことで稚貝の生残に有利な環境を得ていると考えられる。
成果の活用面・留意点
台風通過に同期して放卵放精が起こることから、トコブシ稚貝発生量予測やトコブシ資源変動要因の解明につながる知見である他、種苗放流時期の検討にも応用できる可能がある。また、台風による放卵放精誘発機構を解明することで、他のアワビ類の種苗生産や資源管理へ応用できる可能性がある。

図表1 230185-1.pdf
カテゴリ 繁殖性改善

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