粗飼料多給による短角種の牛肉生産成立のための事前評価

タイトル 粗飼料多給による短角種の牛肉生産成立のための事前評価
担当機関 東北農業試験場
研究期間 1992~1992
研究担当者
発行年度 1992
要約 粗飼料多給による短角種の牛肉生産を可能にするには、現状の技術水準及び収量水準において粗飼料(とうもろこし)が17円/kg以上の価額が実現されれば可能である。それには飼料作物の増収が必要で、枝肉価格1,200円/kg、素牛価格が18万円/頭の場合で6.2~8.4t/10aの収量が達成されることか、あるいは素牛価格が18万円/頭の場合、1,300~1,400円/kgの枝肉価格の保証が必要であると試算された。
背景・ねらい 牛肉自由化後の経営条件の変化や濃厚飼料依存型牛肉生産が抱える問題に対応して、
地域資源を活用した新たな日本型牛肉生産システムの確立が求められている。
その一つの形態と考えられる転換畑の飼料作物を活用した粗飼料多給型牛肉生産が
成立するための事前評価を行った。
成果の内容・特徴
  1. 水稲作付面積5ha、飼料作物面積4ha、肥育牛80頭飼養の経営体を
    想定し、自給粗飼料生産に振り向けることが可能な費用水準(粗飼料に対して支払える
    価値と等しい)を
    表1のような前提をおいて試算した。現状の技術水準では枝肉価格が1,200円/kgで
    素牛価格が15万円/頭ならば11円/kg以上を自給粗飼料の生産に振り向け可能であるが、
    枝肉価格が1,000円/kgではほとんどの場合でその金額は10円/kg以下となる
    (表2)。
  2. 一方、転作田において飼料作物(とうもろこし)が選択されるには、飼料作物の
    地代負担力が他の作物のそれよりも上回らなければならない。転作田において飼料作物に
    対抗する転作作物を小麦、大豆と仮定し、それらの地力負担力を算出すると
    74,423円/10aとなる。飼料作物(とうもろこし)が選択されるには、現状の収量水準
    (4.4t/10a)ならば17円/kg以上の価額が実現されればよい。しかし、現状は
    表2に示したようにこの価額水準にははるかに及ばない。
  3. 粗飼料多給による牛肉生産を成立させるための第1の方法は、飼料作物(とうもろこし)
    の収量水準を向上させることであり、その目標収量を示したのが
    表3である。枝肉価格や素牛価格・目標所得の水準によりかなりの幅があるが、枝肉価格
    1,200円/kg、素牛価格18万円/頭の時、6.2~8.4t/10aが目標収量になる。
  4. 粗飼料多給による牛肉生産を成立させるための第2の方法は、17円/kg以上の地代負担力の
    獲得が可能となる枝肉価格を形成することである。その枝肉価格水準の試算結果を
    示したのが
    表4である。素牛価格や目標所得によって獲得すべき枝肉価格水準は異なるが、
    素牛価格が15万円/頭では1,250~1,300円/kg、18万円/頭では1,300~1,400円/kgの
    価格水準が必要である。
成果の活用面・留意点
  1. 今後の技術開発の指標として有効である。
  2. 増収目標や枝肉価格の水準は、粗飼料の基準とする収量水準によって変動する。
  3. ほぼ同様の飼養方式で生産された短角牛肉は産直で実際に1,400±50円/kgの価格で
    取り引きされており、流通形態を考慮すれば目標の枝肉価格の獲得は可能である。
図表1 230275-1.gif
図表2 230275-2.gif
図表3 230275-3.gif
図表4 230275-4.gif
カテゴリ 経営管理 飼料作物 水稲 大豆 とうもろこし

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