タイトル |
寒冷地灰色低地土水田の有機物長期連用試験からみた肥料及び有機物由来窒素の行方 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
住田弘一
加藤直人
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発行年度 |
2000 |
要約 |
寒冷地灰色低地土水田の有機物長期連用試験における窒素収支の差し引き法による肥料由来窒素の行方は、土壌への集積がほとんどなく、水稲による収奪が約5~6割、系外への損失が約5~4割、有機物由来窒素の行方は、それぞれ約2~4割、約2~4割、約6~2割になる。
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背景・ねらい |
有機物の連用により、地力(窒素肥沃度)は高まり、水稲への窒素供給量が増大するが、その反面、投入量によっては環境への負荷も懸念される。有機物由来窒素の行方については、近年重窒素標識法やδ15N法による解析が始められているが、長期連用下におけるその行方につては差し引き法による推定が簡便かつ有効である。そこで、家畜ふん堆肥や稲わら堆肥の長期連用試験から有機物由来窒素の行方を推定し、環境への負荷を軽減する肥培管理の参考にする。
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成果の内容・特徴 |
- 寒冷地積雪地帯の灰色低地土水田における長期にわたる有機物連用試験から、投入窒素量、土壌への窒素集積量、水稲による窒素収奪量、及びそれらの差としての系外への窒素損失量を求め、肥料及び有機物由来窒素の行方を各試験区の窒素収支の差し引き法により推定する。
- 窒素無施用栽培における窒素収支から、系外から約3~4㎏/10a/yの窒素富化が認められる(表1、2)。
- 肥料由来窒素は、土壌への集積がほとんどなく、水稲による収奪が約5~6割、系外への損失が約5~4割である。(表3)。
- 家畜ふん堆肥由来窒素は、土壌への集積が4割弱、水稲による収奪が約4割、系外への損失が2割強である。(表3)。
- 稲わら堆肥由来窒素は、土壌への集積が2割弱、水稲による収奪が約2~3割、系外への損失が約6~5割である。稲わら堆肥の施用量が2t/10a以上で水稲収量は頭打ち(2割増収)になり、水稲による収奪割合が減少し、系外への損失割合が増大する(表2,3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 有機性資源の循環や環境保全型農業の立場から、家畜ふん堆肥や稲わら堆肥を施用しようとする場面において活用できる。
- 家畜ふん堆肥及び稲わら堆肥連用試験の各データは、それぞれ、連用9年目及び14年目から19年間の値であり、中長期的な連用下での窒素の行方を示している。
- 有機物の分解・蓄積は、有機物の品質とともに気象条件・土壌条件にも左右されるので、その窒素の行方についてはそれらの諸条件を考慮する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
水田
水稲
肥培管理
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