腫瘍壊死因子(TNFα)の投与は牛のインスリン感受性を低下させる

タイトル 腫瘍壊死因子(TNFα)の投与は牛のインスリン感受性を低下させる
担当機関 東北農業試験場
研究期間 2000~2002
研究担当者 櫛引史郎
篠田 満
上田靖子
新宮博行
甫立孝一(現畜産試験場)
発行年度 2000
要約 TNFαの投与は、牛の末梢組織でのインスリンによるグルコース利用を抑制し、血漿グルコースレベルを維持するためのインスリン分泌を高める。この作用は、TNFαが牛のインスリン感受性を低下させることを示している。
背景・ねらい 炎症性サイトカインであるTNFαは、生体内で免疫、炎症機構に関与し、感染症や腫瘍に対する生体防御機構において重要な役割を持つことが知られている。近年、人や実験動物の代謝異常症におけるTNFαの役割、特にインスリン抵抗性への関与が想定されている。牛のインスリン抵抗性は生産性と密接に関連しているにもかかわらず、TNFαとの関係は検討されていない。そこで、組換え型牛TNFαの投与が牛のインスリン分泌能及びインスリン感受性に及ぼす影響を検討した。
成果の内容・特徴
    10頭のホルスタイン種去勢牛(10ヶ月齢、302~345㎏)を用い、組換え型牛腫瘍壊死因子(rbTNF、5.0μg/㎏、TNF区:5頭)または生理食塩水(3ml、対照区:5頭)を1日1回、12日間頸部皮下に注射した。注射開始から8及び10日目にそれぞれインスリン(0.2U/㎏)、グルコース(112.5㎎/㎏)の負荷試験を行い、インスリン作用及び分泌能を評価した。
      
  1. TNF処理期間中の血漿インスリン濃度の基礎値は対照区よりも高くなり、高インスリン血症を呈したが、グルコース濃度の基礎値は対照区と同レベルであった(表1)。
      
  2. TNF区のインスリン負荷後の血漿グルコース濃度反応は、対照区に比べて減少した(図1)。
      
  3. TNF区のグルコース負荷後の血漿インスリン濃度反応は、対照区によりも増大したが、グルコース濃度は対照区と同様であった(図2)。
      
  4. 以上のことから、TNFαは牛のインスリン作用を低下させ、グルコース濃度維持のためのインスリン分泌を増加させること、すなわちインスリン抵抗性を誘導することが明らかとなった。
成果の活用面・留意点
     
  1. 牛のインスリン抵抗性の機構解明及びTNFαの臨床応用を検討するための基礎的データとして有効である。
  2. インスリン抵抗性には、発育ステージ、栄養状態等の要因が影響する。
図表1 231738-1.jpg
図表2 231738-2.jpg
図表3 231738-3.jpg
カテゴリ 抵抗性

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