タイトル | 逆相カラムを用いてサイレージから水溶性の褐変物質が抽出できる |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 1997~2001 |
研究担当者 |
近藤恒夫 村井勝 田中治 嶝野英子 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 飼料中に生成する褐変物質を逆相カラムを用いたエタノール溶出により、分離・抽出する方法を開発した。この物質はモデル系褐変物質と同様の理化学的性状を有する。 |
キーワード | 褐変物質、サイレージ、逆相カラム、エタノール溶出 |
背景・ねらい | 飼料の調製時には様々な栄養価ロスが生じるが、その一因として、水溶性から不溶性にいたる様々な褐変物質の生成が考えられる。この褐変物質は窒素を含む分子量多分散の不規則重合分子であるが、飼料中からの分離・抽出法が確立されておらず、褐変物質の生成が飼料の栄養価ロスにどのように関与しているのか不明である。そこで、この飼料栄養価の評価を正確に行うために、実際の飼料中に生成する褐変物質の新しい分離・抽出法の開発を試みた。 |
成果の内容・特徴 | 1. 高分子物質のモデル系褐変物質(メラノイジン)は酸沈殿法により分離されるが、牧草中の褐変物質は酸による沈殿はおこらず、極性の異なるエタノール中に褐変物質を再溶出させることで、牧草中の水溶性褐変物質を抽出することができる。 2. 褐変物質の抽出方法:牧草およびロールベールラップサイレージを0.1M酢酸ナトリウム溶液中に1昼夜浸漬し、逆相カラムを用いることで、20%および60%エタノール溶液に褐変物質を溶出させ、減圧濃縮後、凍結乾燥して粉末の褐変物質を得る。(図1) 3. 得られた褐変物質の可視吸収スペクトルは、極大吸収を持たない一般吸収を示す。これはメラノイジンの特徴と一致する。(図2) 4. 得られた褐変物質の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)は、1630カイザー付近に吸収を示す。これは酸アミドによる吸収であり、メラノイジンの特徴と一致した。(図3) 5. 本法により得られる褐変物質は、窒素を2.2~6.0%含む。 6. 以上のことから、本法で溶出した水溶性褐変物質はメラノイジンの理化学的性状と一致しており、メラノイジン様褐変物質と考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. この抽出方法を用いることによって、飼料中に生成された水溶性褐変物質を分離・抽出できる。 2. メラノイジンは様々な生理機能を持つことから、本法の確立により、飼料中の水溶性褐変物質の栄養生理機能に関する研究が促進され、褐変化飼料の栄養価評価がより正確に行われる。 3. 本法により得られる褐変物質は水溶性の画分であるが、より褐変化の進んだものは不溶性となるので、不溶性画分の分離・抽出についての検討も必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 乾燥 |