タイトル | オオムギはイネに比べて穂ばらみ期冷温障害に極めて強い |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
山口知哉 小池説夫 中山克大 林高見 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 小胞子初期の冷温処理の結果、オオムギはイネに比べて穂ばらみ期冷温障害に極めて強いことが明らかとなった。 |
キーワード | オオムギ、穂ばらみ期冷温障害、小胞子初期 |
背景・ねらい | 近年東北地方のイネ品種の耐冷性の向上は著しく、長期かけ流しの育種圃場では18.3℃の水温でも稔実可能な系統も育成されてきている。しかし、平成5年の大冷害の時のような気象条件では充分な収穫を確保することは依然として困難であるので、従来の育種手法に替わって飛躍的な耐冷性向上の手法の開発が期待される。オオムギはイネに比較すると数段高い穂ばらみ期の耐冷性を持つと予想されること、冷温感受性期の細胞外膜のカロースがイネに比べて肥厚していることなどの観点から、オオムギの穂ばらみ期耐冷性に関与する遺伝子のイネへの導入により高度耐冷性イネを作出することが可能ではないかと考えた。そこで、本研究ではオオムギの穂ばらみ期の障害型耐冷性を確かめるために小胞子初期に冷温処理をしてイネに比べて極めて穂ばらみ期障害に強いことをデータで示すことを目的とした。 |
成果の内容・特徴 | 1. イネでは止葉葉耳と止葉一葉前の葉耳との間の葉耳間長と幼穂の発育段階との間に高い相関があることが知られているが、ビール醸造用二条オオムギの場合にはこの規則は当てはまらなかった。しかし、止葉の一葉前の葉耳と二葉前の葉耳との間の葉耳間長(図1)と幼穂長との間に高い相関があるのが見いだされ(図2)、この葉耳間長から小胞子の発育ステージを推測することが可能である。 2. オオムギの穎花は穂の中心に位置する穎花を中心に穂の先端と基部に向かって成熟がすすむ。先端部の穎花と基部の穎花は発育が途中で停止したりして不稔になることが多いため、稔実穎花の測定は穂中心部穎花の前後10穎花を調査対象穎花とした(図3)。 3. イネでは、小胞子初期に12℃8日間処理をすると稔実率は極めて低い(2.1%)が、オオムギでは対照と変わらず冷温処理の影響は僅かであった。8℃4日間、6℃4日間、4℃4日間と冷温処理強度が高まるにつれ稔実歩合は低下し、2℃4日間処理で稔実歩合は大きく低下し31%となった(図4)。この結果、オオムギはイネに比べて穂ばらみ期冷温障害に非常に強いことが明らかとなった。 |
成果の活用面・留意点 | 1. オオムギが穂ばらみ期冷温障害に非常に強い要因を探ることで、イネの穂ばらみ期冷温障害のメカニズムの解明に寄与する。 2. オオムギの穂ばらみ期冷温障害耐性に関与する遺伝子を単離し、イネに導入することでイネの穂ばらみ期耐冷性を飛躍的に高める可能性を検討できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 育種 大麦 凍害 品種 |