タイトル | コムギ縞萎縮病汚染土壌中の感染能力定量のための量確値法の試験条件 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
石黒潔 大藤泰雄 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 最確値法によるコムギ縞萎縮病の土壌中の感染能力の定量は、人工気象室内で地温を10℃ 13℃に保ち、被検土壌100gに1~3個体の感受性品コムギ品種を栽培し地下部のウイルス感染を調べることで、30日間 60日間で行うことができる。 |
キーワード | コムギ縞萎縮病、感染能力、最確値法 |
背景・ねらい | コムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)による土壌伝染性のコムギ縞萎縮病は、酵素結合抗体法(ELISA)など感染を診断する技術は確立されているが、媒介者である土壌原生動物Polymyxa graminisの人工培養が難しく、土壌中の感染能力の定量的評価方法は確立されていない。P. graminisが媒介する他の土壌伝染性ウイルス病害では、汚染土壌を無汚染土壌で段階希釈した土壌で餌植物を栽培し、希釈に伴う餌植物の感染頻度の変化から最確値法を利用し土壌中の感染能力を推定した報告がある。そこで、最確値法の各種試験条件をコムギ縞萎縮病の土壌中の感染能力の定量用に改良することを目的とした。 |
成果の内容・特徴 | 1. コムギ縞萎縮病汚染土壌中の感染能力定量法の試験条件を明らかにした(表1)。 2. 媒介者の活動は13℃ 15℃、コムギの根の生長は13℃ 20℃がそれぞれ良好である(図1)。ウイルスの増殖は5℃、10℃が適し、15℃は適さないことが判っているので、最確値法に適した地温条件は、伝染源とコムギ根が遭遇する確率が比較的高く、かつウイルス感染が起こりやすい10℃付近である。 3. ELISAを利用して地下部のWYMVの感染の有無を調べることで、発病率や地上部でのWYMV感染を調べる場合に比べて試験期間が短縮できる(表2)。感受性のナンブコムギと東北農研の縞萎縮病激発土壌を用いた試験では、地温を10℃に保った感染期間30日間と60日間で、全ての区の地下部で感染が認められる。一方、同じ土壌を用いて60日間の感染期間の後にさらに3カ月間発病適温の気温5℃で栽培しても、地上部からのWYMV検出頻度は低い。 4. 餌植物の裁植密度は、1区1~3個体とするのが適当である(表3)。感受性のナンブコムギと東北農研の縞萎縮病激発土壌を用いた試験で、5倍の段階希釈での最確値法において、土壌100gあたり10、5、3、1個体の栽植密度の比較では、餌植物の裁植密度が高い事は必ずしも検出能の向上に結びつかない。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本手法は、伝染源となるPolymyxa graminisのWYMV保毒休眠胞子の絶対数を求めるのではなく、汚染土壌の感染能力を数値化する手法である。したがって、感染能力の低減を目的とした耕種的防除法の効果や土壌の汚染程度の相対評価に用いることができる。 2. 検定に用いる品種は、検定しようとする汚染土壌で感受性が確認された品種を用いること。 3. ウイルス感染の調査手法として、ELISAの外に、より高感度のPCR法などが利用できるが、試料が多数のときは、ELISAで行うのが簡便かつ能率がよい。 4. 最確値法の性質上、伝染源密度が極端に低いと想定される発病土で、無希釈でも実験上感染個体が得られない場合は、本手法は適用できない。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 萎縮病 品種 防除 |