タイトル | 成長ホルモン放出ホルモンの連続投与は黒毛和種牛の乳量を増加させる |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 1998~2000 |
研究担当者 |
新宮博行 甫立孝一 上田靖子 櫛引史郎 篠田満 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 黒毛和種泌乳牛への成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)の連続注射は、内因性の成長ホルモン(GH)分泌を刺激して、血漿インスリン様成長因子-1(IGF-1)濃度の上昇及び増乳効果を発現させる。この時、インスリン(INS)分泌能の亢進が認められる。 |
キーワード | 生理、黒毛和種、乳量、GH、GHRH、IGF-1、INS |
背景・ねらい | 泌乳期の反芻動物にとってGHは乳腺発育や泌乳の維持に極めて重要なホルモンの一つであるが、肉用種である黒毛和種は乳牛に比べて低い血漿GH濃度を示す。GHが増乳効果を持つことは乳牛で知られているが、栄養素を乳腺よりも体内蓄積へ優先的に配分する特徴を持つ黒毛和種では、GHが泌乳機能に及ぼす知見は皆無である。GHRHが乳牛で血漿GH濃度を上昇させることから、本研究では、GHRHの連続注射が黒毛和種の乳量に及ぼす影響を明らかにするとともに、これら泌乳機能と密接に関連する血漿中のGH、IGF-1、INS及びグルコース濃度、並びにグルコース刺激INS分泌機能に及ぼす影響について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 黒毛和種泌乳牛16頭を2区に分け、分娩後5週からGHRH(A15-DAbGRF:3mg/日)または生理食塩水を3週間連続皮下注射する。乳の採取は分娩後4週から8週まで行い、また、採血は皮下注射(各週目)の直前に行う。 2. GHRHを連続皮下注射することにより、乳量の自然低減を抑制するとともに、注射前に比べ11.9%乳量が増加する(図1)。 3. GHRH投与は血漿中のGH、IGF-1、INS及びグルコース基礎値を上昇させる(表)。 4. グルコース負荷試験(112.5mg/kg BW)の結果、GHRH注射により、グルコース刺激INS分泌は亢進される(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. GHRH注射が内因性のGH分泌を刺激して、血漿中IGF-1の上昇とINSの効きにくい状態(INS抵抗性)を誘起することで増乳効果を示すことを黒毛和種泌乳牛で証明した初めての知見である。 2. 黒毛和種繁殖牛における泌乳機能の改善は哺乳量の増加により子牛の発育に大きく貢献することから、本成果は親子放牧や双子生産技術の導入等による肥育素牛生産の低コスト化を図る飼養技術開発の一助になる。 3. 本研究は栄養水準を養分要求量の100%(TDN換算)で実施したことから、栄養水準の違いが泌乳機能に及ぼす影響について検討する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 抵抗性 低コスト 肉牛 乳牛 繁殖性改善 |