タイトル | 無施肥放牧草地での牛の排糞が土壌養分特性と生産力に及ぼす影響 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 1997~2001 |
研究担当者 |
福田栄紀 目黒良平 八木隆徳 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 放牧地において無施肥処理を続けると糞の有無にかかわらず、土壌中K含量は減少するが、NおよびCa含量は減少せず、P含量は排糞によって維持された。糞除去は草地の乾物生産量を低下させる。 |
背景・ねらい | 環境保全を考慮し、資源循環型畜産を成立させるためには、可能な限り草地への化学肥料投入量を削減し、かつ収量の低下を抑えることが求められる。そこで無施肥放牧条件下での排糞が草地の土壌養分特性、乾物生産力に対する影響を解明し、必要最低限の合理的施肥あるいは無施肥の草地管理技術、及び有機畜産技術の開発に資する。 |
成果の内容・特徴 | 1. NPK各成分含量約4kg/10a/年の施肥を続けた黒ボク土壌の緩い西向き斜面の放牧草地(1.2ha,斜度5.5 7.0度,平均気温11.8℃,年間降水量1,303mm)に93年から無施肥で放牧を9年間続けた。この草地を2分し、各区に成牛1頭(約600kg)を5月から10月まで放牧した。一方の牧区では排泄された日平均12個の糞を全て除去した糞無し区と、他方は放置した糞有り区とした。両区は各々シバ優占部分と、オーチャードグラス優占部分の異なる植生区分からなる。土壌中ミネラル含量の年次変動、及び両草種の乾物生産量を両区間で比較した。 2. Kは両区ともに減少傾向を示し、Pは糞無し区で減少した(図1)ことから、施肥はKの維持に、排糞はPの維持に重要な役割を果たすと考えられる。 3. 無施肥処理の上に排糞除去処理を9年間加えてもN、Ca等の減少は認められないことが明らかとなった。N等の天然供給量とその供給メカニズムの詳細な解明が望まれる。 4. 乾物生産量の比較では、シバ優占部で糞有り区は糞無し区の1.7倍、オーチャードグラス優占部では2.3倍の生産を示し、草地生産力の維持に対する排糞の貢献度は高い(図2)。また、低養分条件下では糞の有無にかかわらずオーチャードグラスよりもシバの方が高い乾物生産量を示す。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 必要最低限の施肥あるいは無施肥処理による放牧草地の維持管理技術、及び有機畜産技術開発の参考となる。また草地生態系における養分循環や、そこでの排糞の役割を解明する際の参考となる。 2. 面積当たりの放牧頭数、傾斜条件、土壌条件、気温・降水量の気象条件等によりミネラル含量の推移に違いが生ずることが考えられる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 肥料 管理技術 施肥 |