タイトル | 心白発現の良好な酒造好適米水稲新品種候補「山形酒86号」の育成 |
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担当機関 | 山形農試 |
研究期間 | 1994~2003 |
研究担当者 |
櫻田博 結城和博 佐野智義 中場理恵子 佐藤久実 横尾信彦 本間猛俊 中場勝 佐藤晨一 宮野斉 水戸部昌樹 佐藤久喜 渡部幸一郎 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 「山形酒86号」は熟期が中生の晩、障害型耐冷性が“極強”、心白発現が安定して良好な酒造好適米である。「出羽燦々」に比較し、収量性はやや低いものの玄米品質は明らかに優り、醸造特性は並である。 |
キーワード | イネ、山形酒86号、新品種、酒造好適米、心白発現、極良質、醸造特性 |
背景・ねらい | 県オリジナルの酒造好適米ほど県産酒イメージをアップできるものはない。本県の清酒製造業界は吟醸酒等の高級酒の販売量が多く、純米吟醸酒「DEWA33」をはじめとした県産酒のブランド化を実現している。一方、酒米生産では「美山錦」の導入及び「出羽燦々」の育成によって、県産酒の酒造好適米自給率は約60%まで高まっている。 類業界で勝ち残るため、清酒造りには酒質のバラエティに富んだ新しいテイストとこれに応える酒米が求められている。そこで、優れた品質の酒米新品種を育成し、冷夏等の気象変動に負けない酒米生産の振興と米需要(清酒消費)の増進を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1. 本系統は、1994年に山形県立農業試験場庄内支場において、滋系酒56号(吟吹雪)を母に、山形酒49号(出羽燦々)を父に人工交配を行い、その後代から選抜・育成した大粒心白の系統である(表1)。 2. 熟期は、出穂期及び成熟期が「出羽燦々」より2日程度遅く、育成地では中生の晩に属する。草型は中稈・偏穂重型で、耐倒伏性は“中”である(表1)。 3. いもち病真性抵抗性遺伝子型はPiaと推定され、圃場抵抗性は葉いもち、穂いもちともに“やや強”である。障害型耐冷性は“極強”で、穂発芽性は“やや難”である(表1)。 4. 「出羽燦々」に比べ、収量性はやや低く、玄米千粒重は並である。また、整粒歩合が高く、玄米品質は明らかに優る。心白(眼状)は発生しやすく、大きく、発現は安定して良好である(表1)。 5. 精米歩合60%の場合、砕米率は「出羽燦々」並である。さらに、粗蛋白含有率、醸造後のアミノ酸度は「出羽燦々」並で、酒造用原料米に好適である(表1、2、3)。 6. 試験醸造による生成酒は、原料米の蛋白含有量が高まりやすい冷害年(2003年産)にもかかわらず、アミノ酸度が優れ、きれいで透明感のある酒質である(表4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 山形県では、2004年から奨励品種(認定品種)に採用し、県内中山間部を中心に普及を図る。なお、普及見込み面積は100haである。 2. 遺伝的に心白が大きく、発現も良好であることから、登熟期が高温で日較差も小さく、心白が過大になりやすい地帯(庄内地域平坦部)では栽培を避ける。 3. 醸造適性を低下させないため、さらに、いもち病抵抗性が“やや強”と不十分であることから、多肥栽培を避けるとともに、適期の防除に努める。 4. 刈遅れによる茶米の発生を防止するため、出穂後積算気温1000℃前後の適期刈取りに心掛ける。 |
カテゴリ | 病害虫 いもち病 酒造好適米 新品種 水稲 中山間地域 抵抗性 抵抗性遺伝子 凍害 品種 防除 |