イネいもち病圃場抵抗性遺伝子には、いもち病菌の非病原性遺伝子とのあいだに「遺伝子対遺伝子関係」が成り立つものがある

タイトル イネいもち病圃場抵抗性遺伝子には、いもち病菌の非病原性遺伝子とのあいだに「遺伝子対遺伝子関係」が成り立つものがある
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター
研究期間 1997~2005
研究担当者 善林 薫
芦澤武人
中島敏彦
発行年度 2004
要約 イネ系統「中部32号」のいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34と、本系統を強く侵害しないいもち病菌Y93-245c-2の病原性に関与する遺伝子(非病原性遺伝子)の間には「遺伝子対遺伝子関係」が成り立つ。
キーワード イネ、いもち病圃場抵抗性遺伝子、いもち病菌、非病原性遺伝子、遺伝子対遺伝子関係
背景・ねらい イネのいもち病真性抵抗性遺伝子といもち病菌の非病原性遺伝子の間には「遺伝子対遺伝子関係」が成り立っており、非病原性遺伝子の変異(病原性変異)によって真性抵抗性は崩壊する。一方、いもち病圃場抵抗性は病原性変異の影響を受けないとされているが、強い圃場抵抗性を示すイネ系統「中部32号」では、本系統を特異的に強く侵害するいもち病菌が陸稲圃場から分離されている。
そこで、いもち病圃場抵抗性遺伝子を持続的に利用する基礎的知見を得るため、「中部32号」が抵抗性を示すいもち病菌株が、本系統のいもち病圃場抵抗性遺伝子に対応する病原性に関与する遺伝子(便宜上「非病原性遺伝子」と呼称する)を保有し、イネのいもち病圃場抵抗性遺伝子といもち病菌の非病原性遺伝子の間にも「遺伝子対遺伝子関係」が成り立つことを明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. イネ系統「中部32号」のいもち病圃場抵抗性は、主に優性の1遺伝子Pi34に支配され(平成15年度成果情報)、いもち病菌株IBOS8-1-1は本系統を強く侵すが、Y93-245c-2は強く侵さない(表1)。これは、Y93-245c-2が「中部32号」の圃場抵抗性遺伝子に対し非病原性遺伝子を保有することを示唆している。
  2. Y93-245c-2とIBOS8-1-1を交配して得たF1菌株では、「中部32号」を強く侵す(非病原性遺伝子を持たない)菌株と、強く侵さない(非病原性遺伝子を持つ)菌株が1:1の比率で出現することから、Y93-245c-2の保有する「中部32号」に対する非病原性遺伝子は1個である(図1、表2)。
  3. 「中部32号」と「コシヒカリ染色体断片置換系統(CSSL)」を交配して得たF3系統を、DNAマーカーによって「Pi34ホモ型」、「ヘテロ型」および「Pi34劣性ホモ型」に分類しY93-245c-2を接種すると、「Pi34ホモ型」および「ヘテロ型」は同菌株に強い圃場抵抗性を示す(図2)。
  4. 以上より、イネいもち病菌株Y93-245c-2の非病原性遺伝子AVR-Pi34(t)と「中部32号」のいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34との間では「遺伝子対遺伝子関係」が成り立つ。
成果の活用面・留意点
  1. ここでは「圃場抵抗性」を「親和性菌に対し病勢進展を抑制する(発病度を低く抑える)抵抗性として用いた。
  2. いもち病圃場抵抗性といもち病菌の相互作用に関する基礎的知見となる。
  3. 一遺伝子支配のいもち病圃場抵抗性品種を一般圃場に導入すると、圃場抵抗性遺伝子に対し強い病原力を獲得したいもち病菌の分布頻度が増加する可能性がある。
図表1 232310-1.gif
図表2 232310-2.gif
図表3 232310-3.gif
図表4 232310-4.gif
図表5 232310-5.gif
図表6 232310-6.gif
図表7 232310-7.gif
カテゴリ 病害虫 いもち病 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種

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