タイトル |
ロイテリン生産性乳酸菌のサイレージへの接種効果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2006~2006 |
研究担当者 |
田中治
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発行年度 |
2006 |
要約 |
多くの微生物に対して生育阻害活性を有する物質であるロイテリンを生産する乳酸菌と、ロイテリン生産の基質であるグリセロールをサイレージに接種することによって、酪酸発酵や好気的変敗が抑制される。
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キーワード |
サイレージ、乳酸菌、ロイテリン
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背景・ねらい |
ロイテリン(3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド)は一部の乳酸菌などの微生物によってグリセロールの代謝産物として生産される物質であり、サイレージの不良発酵(酪酸発酵)や好気的変敗の原因菌など多くの微生物に対して濃度200ppm前後で生育を阻止するだけでなく、ロイテリンを添加・放置処理した植物抽出液においては、処理後ロイテリン濃度が大きく減少する場合でも微生物の生育遅延がもたらされることが報告されている。また、ロイテリンはサイレージ中で生産される程度の量ならば家畜に投与しても成育上問題ないことが知られている。そこで、ロイテリン生産性の乳酸菌を用いて酪酸発酵や好気的変敗の抑制が可能なサイレージ調製方法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- ロイテリンを添加・放置処理したトウモロコシ茎葉部抽出液においては、処理後ロイテリンは分解して濃度が大きく減少するが、それを添加しない場合に比べて好気的変敗の原因酵母の生育は遅くなる(図1)。
- サイレージの調製時にロイテリン生産性乳酸菌である Lactobacillus coryniformis 394株と原物1%のグリセロールを接種した区を、グリセロールを添加しない区や他の乳酸菌を接種した区と比べると(表1)、サイロ開封時にはpHはやや高いが、その後は好気的変敗の原因酵母の増殖に伴うpHの上昇が阻害されて好気的変敗が抑制される。
- サイレージの調製時に L.coryniformis 394株とグリセロールの他、ロイテリンを生産するための補酵素であるビタミンB12や炭酸ナトリウムを併せて添加することによってロイテリン生産量は増加し、それに伴って開封後には好気的変敗の原因酵母の増殖やpHの上昇、すなわち好気的変敗はより強く抑制される(表1)。
- 稲発酵粗飼料のロールベール調製時に L.coryniformis 394株を原物1%のグリセロールと共に接種すると、酪酸発酵が抑制され、好気的変敗原因菌であるカビに汚染された部位の割合も減少する(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- サイレージの酪酸発酵と好気的変敗の両方を抑制するための方法として有効である。
- 実用化のためには製剤化方法や接種コストの低減を検討する必要がある。
- ロイテリン濃度が減少後の植物抽出液における微生物の生育遅延効果の原因の詳細については今後解明が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
コスト
とうもろこし
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