PLUGマーカーは類似性の高いコムギ同祖遺伝子の染色体位置を効率的に決められる

タイトル PLUGマーカーは類似性の高いコムギ同祖遺伝子の染色体位置を効率的に決められる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2005~2007
研究担当者 石川吾郎
中村俊樹
齊藤美香(日本製粉)
発行年度 2007
要約 イネ遺伝子とコムギEST配列より作られるPLUG(PCR-based Landmark Unique Gene)マーカーは、コムギのA、B、Dゲノム由来の3つの同祖遺伝子からのイントロン領域を含む断片を特異的に増幅し、さらにイントロン多型により同祖遺伝子の座乗染色体位置を効率的に決定するのに役立つ。
キーワード コムギ、同祖遺伝子、エクソン、イントロン、多型、イネゲノム情報
背景・ねらい 農研機構コムギ育種事業においてもDNAマーカー育種の活用が開始された。しかし、まだ利用可能なマーカー数が少なく、重要形質に関連する遺伝子の同定・選抜マーカー化が必要である。その初期段階として、染色体全体に標識となるマーカー数を増やす必要性がある。この標識マーカー開発の一手法としてイネゲノム情報の活用が有効と考えられる。イネでは約32,000の遺伝子が予測されているが、コムギにおいてもそれらと祖先を同じくする遺伝子(同祖遺伝子)が存在していると推察される。そこで、イネ遺伝子情報からその同祖遺伝子をコムギ染色体上にマッピングできれば、それらは選抜マーカー開発において有益な標識遺伝子となる。しかし、コムギではA、B、Dの3種のゲノムから構成される異質6倍体であるために、各ゲノムに同祖遺伝子が存在すると考えられ(想定遺伝子32,000×3)、さらにそれらの配列は互いに高い類似性を示し、それが同祖遺伝子の染色体へのマッピングを困難にするという問題がある。そこで、イネゲノム情報とコムギEST情報から比較ゲノム的にこの問題を解決する手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. コムギのA、B、Dゲノム上の同祖遺伝子のイントロン領域の類似性は、エクソン領域の類似性に比べて明らかに低く、3同祖遺伝子の多型を見出すには有効な領域であると考えられる(図1)。
  2. イネの全遺伝子(RAP2 build4データによる)中、ゲノム当たり1個と考えられるもの(Landmark Unique Gene: LUGと呼ぶ)は19,079個である。それらLUGに対応すると考えられる類似性が高い(Score > 100)配列(同祖遺伝子)が、コムギ発現遺伝子(EST)データベース(NCBI: UniGene database)に5,903個存在する(2007年10月時点)。
  3. 上記イネLUGと対応するESTの比較により、コムギ同祖遺伝子のイントロン、エクソン配列が予想でき、また、これによりコムギ同祖遺伝子のイントロンを含む領域を増幅可能なPCR用プライマーの設計が可能である。本手法により、EST情報のみを用いた場合に生じるイントロン、エクソン境界にプライマーを作る危険性を回避できる(図1)。
  4. 上記手法により作製されたプライマー(PLUGマーカー)を用いることにより、コムギゲノムDNAよりイントロンを含む1から3の増幅産物が得られる(図2上段)。それら増幅産物と実験系統Chinese Springのナリーテトラソミック系統を用いた解析によって同マーカーの座乗染色体を同定できる(図2)。
  5. 無作為に選んだ24のイネ遺伝子に対応するPLUGマーカーによって増幅されたコムギ遺伝子産物(電気泳動により1から3産物に分離)は、全て目的の同祖遺伝子由来であり、確認されたA、B、Dゲノム由来の同祖遺伝子間の多型は、イントロン由来である。
成果の活用面・留意点
  1. PLUGマーカーを自動的に作製するソフトが開発され、大規模な標識マーカー開発が可能である。
  2. 遺伝子によっては、PLUGマーカーで3同祖遺伝子産物が増幅されない場合もある。
  3. 同マーカーは、オオムギなどの他の麦類のマーカーとしても利用できる。
図表1 232776-1.jpg
カテゴリ 育種 大麦 データベース DNAマーカー

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