タイトル |
オウトウを原料とした果実酢製造技術 |
担当機関 |
山形農総研セ |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
今野陽一
高砂健
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発行年度 |
2008 |
要約 |
オウトウの収穫期間中に発生する実割れ果などを原料として果汁を搾り、それに酢酸菌培養液(種酢)と醸造用エチルアルコールを添加して酢酸発酵(静置法)させると、「山形県らしさ」をアピールするオウトウの果実酢(醸造酢)が製造できる。
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キーワード |
オウトウ、実割れ果、酢酸発酵、果実酢
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背景・ねらい |
果実酢は、現代の健康志向に適した果実加工品と考えられ、多種多様な果実生産県である山形県では、「山形県らしさ」をアピールする商品を開発できる可能性が高い。特に全国一の生産規模を誇るオウトウについては、生食用途に出荷できない実割れ果、キズ果、双子果などの有効活用が望まれている。以上のことから、本県の優位性を生かし、既存の商品群にはない「オウトウを原料とした果実酢」の製造技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- オウトウを原料とする果実酢は、現在栽培されている生食用品種であれば、品種を問わず一定の手順での製造が可能である(図1、写真1)。清澄化した果汁、添加する酢酸菌(Acetobacter.Aceti NBRC3283株)の培養液(種酢)および醸造用エチルアルコールを事前に準備し、種酢と醸造用エチルアルコールの添加量は、それぞれ仕込み総量の5%程度を目安とし、その後は酢酸発酵の経過に応じて不足分を適宜追加する。
- 酢酸菌の至適活動温度は約30~35℃であるが、酢酸発酵中の管理温度はやや高めの方が醸造酢のJAS 規格酸度(滴定酸度4.5%以上)に達する日数は短くなる(表1)。
- オウトウ酢は、酢酸発酵が進むに連れて色調が赤から薄い褐色に変化する。糖は、ショ糖、果糖、ソルビトール、ブドウ糖で構成されており、一般的なリンゴ酢に比べ含量が多い。また、有機酸は、酢酸、リンゴ酸、クエン酸で構成されており、一般的なリンゴ酢に比べ酢酸の含量は少ないが、リンゴ酸やクエン酸の含量が多い。(図2、図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 実割れ果、キズ果、双子果でも原料として利用が可能であるが、製品の品質低下を防ぐための選別(未熟果、病害虫被害果、腐敗果の除去)は丁寧に行う。また、冷凍保存した果実も利用可能であるが、その場合、収穫後果梗を除去するか、収穫時に果実のみを収穫するようにし、洗浄した上で冷凍保存しておくことが望ましい。
- 酢酸発酵中は、ショウジョウバエなどの小型昆虫が酢酸臭に誘引されて発酵槽に入り不衛生となる可能性が高いので、発酵槽の開孔部を通気性のある清潔な農業用不織布などで覆う。
- 製品の殺菌不良や熟成・おり引きの不足は、流通段階での濁りの原因となるので注意する。加熱殺菌の温度と時間の目安は70℃5分、熟成・おり引き期間の目安は3ヶ月程度とする。びん詰め時に、貯蔵容器の底に沈んだおりの状態を観察し、吸引ろ過の速度に合わせてメンブレンフィルター(孔径5.00μm、3.00μm、1.00μm、0.45μm、0.30μm)を適宜使い分けながら2~3回のろ過を行うと、外観品質の向上に効果的である。
- 製造に供する酢酸菌株は、(独)製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門(NBRC)より有償分譲してもらうことが可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
遺伝資源
おうとう
害虫
加工
出荷調整
評価法
品種
りんご
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