タイトル |
77年間に及ぶ寒冷地水稲の無りん酸栽培、無カリ栽培の生育と収量経過 |
担当機関 |
青森農林総研 |
研究期間 |
1930~2006 |
研究担当者 |
清藤文仁
境谷栄二
岩谷香緒里
藤澤春樹
|
発行年度 |
2008 |
要約 |
寒冷地の灰色低地土で堆肥を施用しない水稲無りん酸栽培では開始5年目頃までは減収せず、開始30年目頃では穂数の減少と出穂遅延で1割減収し、開始70年目頃ではさらに2割減収する。なお、無カリ栽培では大きな収量低下はみられない。
|
キーワード |
寒冷地水稲、灰色低地土、無りん酸栽培、無カリ栽培、収量変動
|
背景・ねらい |
国際情勢の大きな変化の中、我国へのりん酸及びカリ肥料の原料供給の不安定さが増し、これによる農業資材高騰に対応するため、現場では減りん酸、減カリ施肥栽培への要求が高まっている。りん酸及びカリは窒素と異なり、用量試験には長い時間を要する。 今回、寒冷地水稲栽培で77年間継続した肥料三要素試験の結果から、今後の技術開発に資する成果が得られたので紹介する。
|
成果の内容・特徴 |
- 連用試験(77年間)終了後の無りん酸区の可給態リン酸量は明らかに少なく、可給態窒素量も少なくなる。同様に無カリ区では交換性カリ量の低下はみられるが、可給態窒素量の低下はみられない(表1)。
- 無りん酸区では開始5年目までは無堆肥慣行施肥栽培並の収量を維持するが、その後は連続的に減収し、その程度は30年目頃で1割、70年目頃で2割である。無カリ区では大きな収量低下はみられない(図1)。
- 無りん酸区では、開始5年目までは穂数の大きな減少及び出穂の遅延はみられないが、1割減収の30年目頃から穂数が減少し出穂も遅延する。さらに、2割減収の70年目頃からは穂数の減少は1割減収の場合と同程度であるが、出穂の遅延はやや拡大する。無カリ区では全期間を通じて穂数の減少、出穂遅延はみられない。(表2)
- 無りん酸区の稲体窒素吸収量は1割減収までは無堆肥慣行栽培の9割以上であるが、2割減収ではこれより減少し、ほぼ無窒素栽培開始5年目頃(2割減収)に相当する。また、稲体りん酸吸収量は減収程度が大きくなるにつれ低下する。無カリ区の窒素吸収量は三要素区と同等~やや少なめで推移する。一方、カリ吸収量は80~90%の幅で推移し、要素欠如の影響は小さい。(表3)
|
成果の活用面・留意点 |
- りん酸及びカリ減肥栽培の参考となる。
- 本成果は青森県農林総合研究センター圃場(青森県黒石市、灰色低地土)より得られた。なお、全期間を通じて有機物は無施用、圃場内の稲わらは持ち出しとした。
- 跡地土壌(2008年秋)の三要素区の分析結果から試験圃場の土壌のりん酸肥沃度は中庸、カリ肥沃度やや低いものと考えられる。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
図表4 |
 |
カテゴリ |
土づくり
肥料
水稲
施肥
|