動力ポンプを用いない排液再利用型の傾斜地用養液栽培装置

タイトル 動力ポンプを用いない排液再利用型の傾斜地用養液栽培装置
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2002~2005
研究担当者 伊吹俊彦
角川修
笠原賢明
東出忠桐
発行年度 2003
要約 本装置は傾斜地で生じる給液ムラを解消し、原水の水圧により動力ポンプを用いないで給液を行うた養液栽培装置。排液は、傾斜を利用してタンクに回収し、アスピレーターにより培養液に混入して再利用する。
キーワード 傾斜地、養液栽培、排液再利用、アスピレーター、トマト
背景・ねらい
 四国中山間傾斜地では、気象災害を回避し、高品質生産を行うために、平張型傾斜ハウスが開発され、施設栽培の導入が始まっている。しかし、傾斜地における野菜栽培では、圃場を維持するための土上げ作業や連作による土壌伝染性病害が問題となっている。これらの問題を解決するために傾斜地の特性を活かし、安価で、環境負荷の小さい養液栽培装置を開発する。
成果の内容・特徴 1.
本装置は傾斜地に対応した初めての養液栽培装置であり、原液タンク、排液タンク、無動力液肥混入器、電磁弁、点滴ノズル、逆止弁、アスピレーターなどで構成する。原水圧のみで給液を行い、動力ポンプは不要である。等高線方向に栽培ベッドを設置し、圃場の傾斜を利用して排液を回収する(図1、図2)。
2.
傾斜地の給液では、通常の点滴ノズルを用いた場合、給液停止後に管内の培養液が低い位置より漏水して給液ムラとなる。この漏水は、一定水圧以下になると吐出が停止する点滴ノズルを使用することで防止できる。ノズルにかかる給液停止後の水圧が一定以下となるように逆止弁などで配管を分割することにより逆止弁または電磁弁で配管を区切ることにより給液ムラが解消できる(表1)。
3.
アスピレーターを用いることで、給液時の水流により無動力で排液を新しい培養液に混入して再利用できる(図3)。本装置では、原水圧0.3MPa、二次水圧0.1MPaの場合、給液量に対する排液の混入率は実測で22%である。これにより系外に排出される量を、通常の排液率20~30%に比べて削減可能となる。
4.
センサー類やベッド支持体を用いず、低コスト化がはかられており、資材費は、10a当たり116万円であり、市販の平坦地用装置の約750300~450万円に比べておよそ1/4~、1/63以下である。また、電力は、タイマー及び電磁弁の作動に用いるだけである。
成果の活用面・留意点 1.
本装置で用いている給液の均一化技術は、傾斜地における養液土耕その他の灌水技術や養液土耕にとして利用できる。
2.
本装置における給液では、常時、8割程度の新鮮な培養液が含まれており、給液管理については一般的な養液栽培に準じて行う。
3.
本装置による実証試験を平均傾斜度6度の圃場で行ったところ、4月末から12月始までの7ヶ月間以上にわたって、夏秋トマトの栽培が可能であった。
図表1 232995-1.gif
図表2 232995-2.gif
図表3 232995-3.gif
図表4 232995-4.gif
カテゴリ 傾斜地 施設栽培 中山間地域 低コスト トマト 野菜栽培 養液栽培

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