トマト果実において成熟制御関連遺伝子NORに非依存的に発現する遺伝子群

タイトル トマト果実において成熟制御関連遺伝子NORに非依存的に発現する遺伝子群
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2002~2004
研究担当者 永田雅靖
丸  諭(千葉農総研)
桑田主税(千葉農総研)
今西俊介
柴田大輔(かずさDNA研)
西村繁夫(筑波大)
青木孝一(千葉農総研)
前田ふみ(かずさDNA研)
津金胤昭(千葉農総研)
渡邉学(かずさDNA研)
発行年度 2004
要約 トマトDNAアレイに搭載された約10,000の遺伝子のうち、成熟変異nor
背景・ねらい
果実成熟の生理機構を分子レベルで明らかにし、そのキーとなる調節因子の制御方法を見いだすことは、高鮮度・高機能性というニーズに対応したトマト果実の画期的な高品質流通技術の開発につながるものと期待されている。トマト果実の成熟には植物ホルモンであるエチレンが大きな役割を果たしている。また、植物の病害抵抗性や老化に関わるジャスモン酸は、成熟にも関与することが知られている。一方、果実成熟が抑制されたトマト変異系統nor
の原因遺伝子座の野生型対立遺伝子NOR は、エチレンとは独立して果実成熟を制御する因子とされるが、その機構は明らかになっていない。そこで、エチレンおよびジャスモン酸とNOR
の関係を、DNAアレイを用いて遺伝子発現の面から明らかにする。
成果の内容・特徴 1.
DNAマクロアレイに固定された重複の無い10,911個のトマトcDNAクローンのうち、ジャスモン酸メチルエステル(MeJA)処理によって発現レベルが10倍以上に上昇するものは、野生型系統においては24クローンである。そのうちnor系統においても10倍以上に上昇するのは、エチレン生合成関連遺伝子のACC(1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸)酸化酵素-1遺伝子(ACO1
)など2クローンである(図1)。
2.
野生型系統およびnor 系統におけるMeJAおよびエチレンに応答した発現の変動パターンを多変量解析により分類すると(図2右)、野生型系統とnor
系統ともにMeJAで誘導されるACO1 (図2A)と同じカテゴリーには、自己防衛・ストレス関連に加えて代謝関連遺伝子が多く含まれる(図3A)。これらは、NOR
およびエチレンに非依存的に発現する遺伝子群である。
3.
野生型系統でのみエチレンとMeJAで誘導されるACC生成酵素-2遺伝子(ACS2
)(図2B)のカテゴリーには、転写や翻訳に関連する遺伝子が多く含まれる(図3B)。
4.
野生型系統とnor 系統ともにエチレンやMeJAによる誘導を受けないACC生成酵素-4遺伝子(ACS4
) (図2C)のカテゴリーには、機能未知の遺伝子が多い(図3C)。
成果の活用面・留意点 1.
ジャスモン酸は成熟エチレン生成をNOR 非依存的に調節している可能性がある。
2.
発現様式がACS4 と同じカテゴリーの遺伝子群は、MeJAやエチレンおよびNOR
以外の成熟トリガーとなるシグナルによって発現制御されることが示唆され、未知遺伝子の中に果実成熟に深く関わる遺伝子が含まれる可能性がある。
図表1 233073-1.gif
図表2 233073-2.gif
図表3 233073-3.gif
カテゴリ 機能性 トマト 病害抵抗性

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