タイトル | 「静-印雑131」由来香気成分アントラニル酸メチルの含有を支配するMat遺伝子座 |
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担当機関 | 茶業研究部 |
研究期間 | 2004~2006 |
研究担当者 |
田中淳一 澤井祐典 |
発行年度 | 2004 |
要約 | チャ系統「静-印雑131」に由来し、その子にあたる「そうふう」や「藤かおり」を特徴づけている花香の香気成分アントラニル酸メチルの含有は、RAPDマーカーTRWO-03S近傍の一遺伝子座(Mat)によって支配されている。 |
背景・ねらい | 中国茶への人気にみられるように、消費者の茶の香気多様化へのニーズは大きい。「静-印雑131」は『花香』と呼ばれる特有の香気を有し、「静-印雑131」を素材に「そうふう」や「藤かおり」等、花香を有する品種・系統が育成されている。これらの品種・系統の新芽は、他の多くの日本の緑茶品種からは検出されない香気成分アントラニル酸メチルを含有しており、この物質が茶としての『花香』に強く寄与することが知られている。香気の多様化にむけた茶育種に貢献するために、アントラニル酸メチルの含有の遺伝を解明する。 |
成果の内容・特徴 | 1. アントラニル酸メチルを含有しない「やぶきた」とこれを含有する「静-印雑131」の交雑に由来するF1集団において、アントラニル酸メチルを含有する全ての個体は明確な花香を有する。また、アントラニル酸メチルを含有する個体としない個体が1:1に分離し(表1)、この形質が一遺伝子座(Mat)によって支配されると判断できる。 2. 「やぶきた」と「静-印雑131」の交雑に由来するF1集団中で、1:1の分離比に適合した分離を示すRAPDマーカーTRWO-03Sは、F1集団でアントラニル酸メチルの含有と密接に相反連鎖している(表1)。Mat 遺伝子座はTRWO-03S座近傍にあり、その遺伝距離は2.1cMと推定される(図1)。 3. アントラニル酸メチルは、「そうふう」や「藤かおり」の他、「静-印雑131」の後代の茶系統適応性検定試験供試系統中で、花香ありと判断された「金谷22号」および「宮崎24号」からも検出される。また、「MAKURA1号」、「Ak1699」等、「静-印雑131」と親子関係がないが花香を特徴とする素材からも、アントラニル酸メチルは検出される(表2)。 4. Mat 遺伝子座の遺伝子型は、「やぶきた」が(mat/mat)、「静-印雑131」が(Mat/mat)である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 「やぶきた」等TRWO-03Sが検出されない品種・系統と、「静-印雑131」との交雑に由来するF1集団を対象に、TRWO-03Sをもちいてアントラニル酸メチル非含有個体を淘汰できる。 2. TRWO-03Sは、上記F1の後代集団では選抜に用いることができない。「静-印雑131」を片親とするF1でMat を受け継ぐもののTRWO-03Sが検出されない「そうふう」、「藤かおり」、「宮崎24号」の後代集団を、TRWO-03Sで選抜することはできない。 3. 「そうふう」、「藤かおり」、「金谷22号」および「宮崎24号」のMat 遺伝子座の遺伝子型は、その来歴より(Mat/mat)と推定される。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 育種 茶 品種 |