タイトル |
メタン発酵消化液由来無機態窒素のキャベツ畑土壌における動態 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
徳田進一
田中康男(畜産草地研)
東尾久雄
村上健二
相澤証子
浦上敦子
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発行年度 |
2007 |
要約 |
メタン発酵消化液を圃場に施用する場合、溝施用した後に覆土することでアンモニア揮散を抑制することができる。キャベツ栽培中、および栽培終了後の消化液由来と化成肥料由来の無機態窒素の土壌中での動態に違いは認められない。
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キーワード |
メタン発酵消化液、家畜排せつ物、アンモニア揮散、窒素動態、キャベツ
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背景・ねらい |
家畜排せつ物のメタン発酵処理により発生するメタン発酵消化液(以下、消化液)は、速効性窒素成分であるアンモニア態窒素を高濃度で含んでおり、肥料としての有効利用が期待されているが、野菜栽培への利用例は少ない。特に、圃場に施用する場合に悪臭発生と窒素損失につながるアンモニア揮散や、大量の水分と同時に施用する消化液由来の窒素動態についての検討例は少ない。そこで、国内主要野菜であるキャベツの栽培において、消化液を施用する場合のアンモニア揮散と土壌中での施用窒素の動態を、化成肥料を施用する慣行栽培と比較する。
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成果の内容・特徴 |
- 化成肥料施用時にはアンモニア揮散は認められないが、表1に示す消化液を表面施用するとアンモニアが揮散する(図1)。しかし、消化液を溝施用後、すみやかに消化液が隠れる程度覆土することにより、その後のアンモニア揮散をほぼ抑制できる(図1)。
- 初夏どりキャベツの結球部、外葉部の生重は、慣行栽培と消化液栽培の間に5%水準で有意差は認められない(図2左)。差し引き法で評価した地上部による施用窒素の吸収利用率にも5%水準で有意差は認められない(図2右)。
- 消化液由来アンモニア態窒素は、化成肥料由来アンモニア態窒素と同様にすみやかに硝化されて硝酸態窒素に変化し、栽培期間中の土壌中の無機態窒素濃度には慣行栽培と消化液栽培の間に5%水準で有意差は認められない(図3)。また、栽培終了後の土壌の全窒素と可給態窒素についても、5%水準で有意差は認められない(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 消化液を活用した露地野菜の栽培技術を確立する際の基礎的知見となる。
- 慣行栽培は、堆肥を生重で2t/10a/作、化成肥料(NPKそれぞれ8%含有)を20kgN/10a/作(基肥15kgN、追肥5kgN)施肥し、消化液栽培では、慣行栽培と同量の堆肥を施用するが、化成肥料由来窒素の全量を消化液由来アンモニア態窒素で代替したものである。この場合、基肥とした消化液15kgN/10a(総量24kL/10a)のうちの2/3を、幅、深さともに15cm程度の溝に施用して覆土後、残り1/3を表面施用して溝上にキャベツ苗を定植し、追肥消化液5kgN/10a(総量8kL/10a)を結球開始期に条間に表面施用している。
- キャベツ品種は「金系201号」で、セル成型苗を利用した。作型は、播種3月2日、定植4月7日、収穫6月23日である。
- 使用した堆肥の主な性質は次の通りである。水分含量71%、pH9.5、EC4.6mS/cm、全窒素(乾物中)2.5%、全炭素(乾物中)43%、CN比17
- 本試験は畜草研(つくば)内の野菜畑(淡色黒ボク土)で実施した結果であり、土壌条件や気象条件が変わると、結果が異なる可能性がある。
- 消化液中の有機態窒素は極難分解性のため、短期的には肥効発現は無視できる(石岡2007)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
キャベツ
栽培技術
施肥
播種
品種
メタン発酵消化液
野菜栽培
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