日本品種と中国およびベトナム産チャにおける葉緑体DNA塩基配列の差異

タイトル 日本品種と中国およびベトナム産チャにおける葉緑体DNA塩基配列の差異
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2007~2007
研究担当者 氏原ともみ
林宣之
発行年度 2007
要約  主要な日本チャ品種の葉緑体rbcL-accD領域の塩基配列は、「からべに」を除き2種類のタイプに分類される。一方で、中国およびベトナム産栽培チャでは多数のタイプが存在するため、この領域は日本品種と中国産およびベトナム産栽培チャの識別に利用できる。
キーワード チャ、葉緑体DNA、塩基配列
背景・ねらい  緑茶については原産国表示が義務付けられており、その表示を検証する技術の開発が求められている。葉緑体DNAは細胞内でのコピー数が多いため、製茶葉より抽出したDNAからも容易にPCRで増幅が可能である。本研究成果では、葉緑体DNAの塩基配列中に、日本品種と外国産茶、特に輸入の大半を占める中国産およびベトナム産茶(ただし現地の品種・系統を使用したもの)を識別可能な差異を見出すことを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 解析に用いたrbcL-accD領域は、葉緑体rbcL遺伝子の3’末端側約60 bp、accD遺伝子の5’末端側約930 bp、両遺伝子間の非コード領域約530 bpを含む。この領域では12ヶ所の一塩基多型(SNP)、1個のsimple sequence repeat(SSR)および2ヶ所のinsertion/deletion polymorphism(In/Del)が見出される。SNPのうち4ヶ所は非コード領域に、残り8ヶ所はaccDコード領域に存在する。SSRは非コード領域に、2ヶ所のIn/DelはいずれもaccDコード領域に存在する。rbcLコード領域には多型は存在しない。
  2. 表1に示すように、分析した21の日本品種のうち、日本在来チャより選抜された18品種は、配列中に見出された2つのSNPにより2つのタイプに分類される。葉緑体DNAは母性遺伝するため、これらの品種を種子親とする品種も同様のタイプであると考えられる。日本品種のうち、インドのアッサム地方より導入されたアッサム変種を種子親とする「はつもみじ」および「べにほまれ」の2品種も、これら2つのタイプに分類される。中国湖北省より導入された中国変種を種子親とする「からべに」は別のタイプに分類される。
  3. 日本品種に比べ、分析に用いた28個体(品種6つを含む)の中国産在来栽培チャおよび7個体のベトナム産在来栽培チャでは、日本で見出された2つに加え多数のタイプが見出される(表2)。以上より、葉緑体rbcL-accD領域は、日本品種と中国産およびベトナム産在来栽培チャの識別に利用可能である。
  4. 中国雲南省で採集されたチャでは、近縁種のCamellia taliensis、C. irrawadiensisに特徴的なIn/Delのうち1つまたは2つを有する個体が見出される(表2、表3のタイプVI, VII)。
成果の活用面・留意点
  1. 一般的な日本品種は2つのタイプに分類されるため、市販緑茶について、これ以外のタイプを検出した場合、日本品種ではない品種がブレンドされている可能性が高い。「からべに」については、少量(平成16年の時点では全国で0.3 ha程度、総茶園面積の0.00061%)ではあるが栽培されているため、検出される可能性がある。
  2. 日本品種の持つ2つのタイプは、日本品種に固有のものではなく、外国産茶でも見出されるものである。従って、これら2つのタイプのみが検出されたとしても、日本品種100 %で構成されることを保証するものではない。
図表1 233136-1.gif
図表2 233136-2.gif
図表3 233136-3.gif
カテゴリ 品種

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