タイトル |
稲わら原料特性に対応したバイオエタノール製造のための前処理技術「CaCCO法」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
徳安 健
朴 正一
城間 力
Muhammad Imran Al-Haq
池 正和
近藤始彦
荒井(三王)裕見子
井田 仁
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発行年度 |
2009 |
要約 |
稲わら中のセルロース、キシランに加え、共存するショ糖や澱粉からも糖質を回収できる前処理技術(CaCCO法)では、水酸化カルシウム前処理後の固液分離工程を省き、遊離性の高い糖質の流亡を抑えられる。
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キーワード |
稲わら、ショ糖、澱粉、バイオエタノール、CaCCO
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背景・ねらい |
稲わら原料を用いて100円/L程度の低コストでバイオエタノールを製造するためには、繊維質中のみならずショ糖、澱粉等の易分解性糖質由来の発酵性糖質も回収する必要がある。その一方で、繊維質の前処理法として有効性の高いアルカリ前処理法の多くは、後段に固液分離を必要とし、遊離しやすい糖の流亡を招く。そこで、固液分離工程を必要としない、繊維質のアルカリ前処理工程を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 稲わら原料を粉砕し、水酸化カルシウムの懸濁液と反応させた後、炭酸ガスで中和し、中和後の塩である炭酸カルシウムを反応槽内に残す前処理工程(CaCCO法:Calcium Capturing by Carbonation)では、一般的なアルカリ処理後に行われる固液分離工程を省き、ワンバッチで前処理、糖化及び発酵反応ができることが特徴である(図1)。
- 稲わらの水酸化カルシウム処理後、塩酸中和・固液分離工程により回収した固形分(HCl中和物)と、炭酸ガス中和物(CaCCO)を基質として用い、酵素糖化率を比較した場合、易分解性糖質を殆ど含まないコシヒカリ由来の稲わらでは、キシランの糖化率が高い。易分解性糖質を多く含むリーフスターでは、グルカンの糖化率も高い(図2)。
- CaCCO法での前処理稲わらを基質とし、二種類の酵母(Kluyveromyces marxianus及びPichia stipitis)を用いた並行複発酵により、グルコース及びキシロースの量から計算されるエタノールの理論収率に対して75.3%の収率となる(図3)。
- 反応槽内に残存する炭酸カルシウムは、蒸留残渣の燃焼により灰分として回収後、熱処理により酸化カルシウムとして再生可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- CaCCO法を用いると、前処理から糖化・発酵までのワンバッチ処理が可能である。また、アルカリ中和時に必要となる炭酸ガスは、発酵及びボイラー燃焼時の副生物を用いることができる。
- CaCCO法は、稲わらのみならず、ショ糖や澱粉を含む多様な草本茎葉原料やホールクロップに対して適用可能である。ただし、グルコースやフラクトースなどの遊離還元糖は、アルカリ処理に対して不安定であり、エタノール収率低下の原因となることから、スイートソルガムなどの遊離還元糖を多く含む原料を用いる際には、搾汁後のバガスのみを前処理に供する等、工程を検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
ソルガム
低コスト
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