タイトル |
喫煙・飲酒者ではβ-クリプトキサンチンなどの血中カロテノイド濃度が顕著に低い |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
杉浦 実
中村美詠子
小川一紀
生駒吉識
松本 光
下方浩史
安藤富士子
矢野昌充
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発行年度 |
2009 |
要約 |
ミカン主要産地住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)から、飲酒と喫煙の両方の習慣を有する人ではどちらの習慣も有さない人に比べて、α-、β-カロテンおよびβ-クリプトキサンチンの血中濃度が顕著に低い。
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キーワード |
カロテノイド、飲酒、喫煙
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背景・ねらい |
喫煙や飲酒は生体内で活性酸素種を発生させ、酸化ストレスを引き起こすため、がんや心血管系疾患などの生活習慣病の原因の一つになると考えられている。これまで喫煙あるいは飲酒の習慣を有する人では血中のビタミンCやβ-カロテンレベルが低下していることが報告されているが、これは過剰な酸化ストレスを消去するためにこれらの抗酸化物質が消耗されるためと考えられている。一方、主要なカロテノイド6種に及ぼす喫煙と飲酒の影響を、カロテノイドの摂取量と血中濃度の双方を考慮して詳細に解析した報告はない。そこで、当研究チームが平成15年度から実施しているウンシュウミカン産地の住民約千名を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)において、近年公表された果物・野菜中のカロテノイド含有量データを利用し、カロテノイドの摂取量と血中濃度に及ぼす喫煙と飲酒の影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 三ヶ日町研究の協力者1073名(女性716名、男性357名)を対象に、各被験者の食事調査結果と果物・野菜中のカロテノイド含有量から、一日当たりの6種のカロテノイド摂取量を算出すると、各カロテノイドの摂取量はその血中濃度と有意に相関する。
- 被験者を喫煙者と非喫煙者(元喫煙者を含む)で分け、更にアルコール摂取量から非飲酒群(一日当たり1g未満)、軽度飲酒群(1日当たり1g以上25g未満)、アルコール常用群(一日当たり25g以上)に分け、計6群でのカロテノイド血中濃度を各群のカロテノイド摂取量が同じになるように統計処理を行った上で計算すると、非喫煙者(図1中○印)においては、軽度の飲酒量ではカロテノイドの血中濃度はほとんど変わらないが(図1中矢印a)、アルコール常用者では、リコペン、α-カロテン、β-カロテン及びβ-クリプトキサンチンの血中濃度が有意に低い(図1中矢印b)。
- 一方、喫煙者(図1中●印)においては、飲酒しない人達でのカロテノイド血中濃度は何れも非喫煙者と有意な差は認められないが、飲酒量が比較的少量でもα-カロテン、β-カロテン及びβ-クリプトキサンチンの血中濃度は有意に低く(図1中矢印c)、飲酒量が多い人では更に顕著に低い(図1中矢印d)。
- 飲酒も喫煙もしない人達に比べて、喫煙習慣を有するアルコール常用者では、β-クリプトキサンチンの血中濃度は約53%、β-カロテンは52%、α-カロテンでは約43%低い。一方、ルテイン及びゼアキサンチンの血中濃度は飲酒や喫煙による影響が小さい。
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成果の活用面・留意点 |
- カロテノイドは、飲酒・喫煙で起きる酸化ストレスに対して有効な抗酸化物質と考えられることから、今後ヒトレベルでの研究を進める際に役立つ資料となる。
- 健康のためには飲酒量を控えて禁煙することが最も重要なことであるが、本研究結果は、果物・野菜の推奨摂取量を考える上で、喫煙・飲酒習慣の有無に配慮する必要性を示した重要な知見となる。
- 本研究結果はミカンの摂取量が多い三ヶ日町において得られた結果である。そのため血中β-クリプトキサンチンレベルは他の地域に比べて高い。
- アルコール25gはビール大びん1本分に相当する。
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図表1 |
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カテゴリ |
温州みかん
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