GISをベースとした農地の持つ土壌侵食防止機能量の分析手法

タイトル GISをベースとした農地の持つ土壌侵食防止機能量の分析手法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 小川茂男
吉迫 宏
島 武男
発行年度 2009
要約 農地の土壌侵食防止機能について、GISや衛星データから変化する土地利用に伴う影響を分析する手法である。現在の土壌侵食量とシナリオに基づく土地利用を想定した侵食量との比較から、県の範囲程度まで精度良く土壌侵食防止機能量を推定できる。
キーワード 広域評価、多面的機能、土壌侵食、USLE
背景・ねらい 農地の持つ多面的機能の一つとして土壌侵食防止機能がある。これを広域に評価する場合、従来は畑地のみの推定法や簡易的な推定法であった。そこで、畑地だけでなく水田、転換畑、放棄地等も含めて、県の範囲程度まで適用が可能なGISデータや衛星データを用いた土地利用変化に伴う土壌侵食防止機能の評価手法を開発する。基本となる土壌侵食量の推定には世界的に用いられている汎用土壌流亡推定式(USLE)を用いる。
成果の内容・特徴
  1. 降雨係数(R)、土壌係数(K)、斜面長・傾斜係数(L・S)、作物管理係数(C)および保全係数(P)に関するGISデータや文献データなどを収集し、USLEに必要な6項目の分布図を作成する(図1)。例えば、現況の土地利用は第4次農地基盤データの地目(田、畑、樹園地、草地)と衛星データを用いて転換畑、放棄地等の項目も含めて分類する。また、中山間地の水田の作物管理係数(C)は、適当な文献がないため、別途土壌侵食の観測を行って値を求める。L・S値の推定には、空中写真から農地区画を読み取り、地形傾斜モデル(DEM)と合わせて対象地域の田、畑、樹園地、草地といった圃場タイプ毎のL・S推定式を作成し、この式から求める方法で推定精度の向上を図っている。
  2. 得られた6項目の係数データから、現況の土地利用における農地の土壌侵食量をUSLEにより推定する。O県を対象に推定した2000年の土壌侵食量分布図を図2(a)に示す。土壌侵食防止機能量を評価するためには、適切な土地利用を設定する。例えば、傾斜地水田の評価では、シナリオ1として「地形傾斜1/20以上の水田だけが、耕作放棄地化後長期間を経て、自然傾斜でかつ自然植生に戻った状態」を、また、過去と比較するためにシナリオ2として「すべての農地が形成される前の自然傾斜、自然植生の状態」を設定する。シナリオ1、2に基づき土壌侵食量を推定する(図2(b)、(c))。
  3. シナリオ1と現況の土壌侵食量の差を傾斜地水田の土壌侵食防止機能量と定義し計算した(図3)。この値が正であれば、農業を営むことによって土壌侵食が防止されることを意味し、傾斜地水田が土壌侵食防止機能を果たしていることがわかる。該当する水田の面積は60,860ha(農地の76%)、1/20以上の傾斜地水田が20,732ha(水田の34%)を占め、傾斜地水田が現況で1.4t・ha-1・y-1に対し放棄されると37.7t・ha-1・y-1に増加するなど、様々な分析が可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 将来の土地利用の変化に伴う土壌侵食防止機能量を広域で精緻に分析する手法であり、気候変動や作物管理機能の低下など将来の地域予測・把握に利用可能である。応用的な利用にあたっては、USLEの各係数が適正に変換されているか注意する必要がある。
  2. 提案した分析手法は国内であればどの地域でも適用可能であるが、土地利用の変化などのシナリオ設定には地域特性を十分に踏まえて決定することが望ましい。
  3. 解析にはGISソフトウェア、画像処理ソフトウェアが必要である。
図表1 233970-1.png
図表2 233970-2.png
図表3 233970-3.png
カテゴリ 画像処理 傾斜地 水田 中山間地域

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