タイトル |
中山間地域における地元農家との関わりからみた新規就農者の地域定着条件 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
石田憲治
島 義史
吉村亜希子
守友裕一
作野広和
上野美帆
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発行年度 |
2009 |
要約 |
新規就農者の地元農家との関係形成には研修終了後3~4年を要する。新規就農者の定着には、住宅や農地の確保、技術研修等の初期支援のほか、早期からの地域活動参加や自立後の定住に向けた継続支援の受け皿と公的機関によるリスク負担が重要である。
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キーワード |
中山間地域、新規就農者、地元農家、定住支援
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背景・ねらい |
中山間地域における集落機能の低下や限界集落化の抑止対策の一つとして、担い手の減少を少しでも補完するために新規就農者の受け入れ事例が増加している。行政主導による営農と生活の両面での新規就農者支援が進むものの、新規就農者の地元農家等との関係構築ができずに定住に至らない事例も散見される。本研究では、就農の場の提供や技術指導にとどまらず、地元農家や地域住民との交流にも配慮した、行政主導の新規参入支援施策を行っている愛媛県久万高原町及び広島県神石高原町を対象に、地域へ定着する条件並びに定着を誘導するための地元農家による継続的支援を促す条件を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 10年間に23名の研修生を受け入れて20名が定着した愛媛県久万高原町と9戸が入植して全戸が定着した広島県神石高原町では、気象条件に影響されにくいハウス園芸主体の品目選定、生産基盤の新規整備、研修費の支給や生産・出荷・流通販売まで一連の技術指導と定着までの期間のリスク回避を行政が支援している点が共通している。
- トマト団地造成(工期1995~99年)を行った神石高原町旧豊松村地区では、収穫面積、収穫量が倍増して、新規就農者のほか地元農家の経営規模も拡大している(図1)。
- 地域での支援の継続性を左右する地元農家との関係構築において、地元農家は新規就農者への支援提供の可否を見極めるまでに、農業公社での研修終了後3~4年かかる。そのため、行政・JA等の農業団体や農家から構成され、新規就農者の研修を採用審査段階から関わっている担い手育成協議会の会員に比べて長い期間を要する(図2)。
- 地元農家が支援提供の可否を判断する新規就農者の基準として、人柄に加え、地区の共同作業や防災活動への参加など集落機能の維持にかかわる項目の得点が高い(表1)。
- 神石高原町の事例では、23歳以上45歳未満で配偶者のいる者など、家族での入植を前提とした新規就農者を募集して、就学期の保護者集団の形成を通した地域定着を図っている。運動会などの学校行事を通した地元農家や地域住民との活動が定着に有効である。
- JAの部会や自治会において、地元の支援農家等を中心に支援提供の組織的な受け皿を整備することにより、新規就農者への支援に中立・消極的な農家の段階的な参加の場が形成される。
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成果の活用面・留意点 |
- 中山間地域の農業振興のために、公的機関が主導して新規就農者の定着支援を行う際の参考になる。
- 産地形成や技術水準、新規就農者の受け入れ経験などの地域条件に十分な配慮が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
経営管理
出荷調整
中山間地域
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