タイトル |
水稲の高温障害対策と両立できる用水管理の調整手法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2008~2010 |
研究担当者 |
友正達美
山下 正
|
発行年度 |
2009 |
要約 |
水稲の高温障害対策には用水需要に影響を及ぼすものがある。農業普及側と用水供給側が連携して用水管理を調整する手法であり、様々な高温障害対策から用水の供給可能量を考慮した適切な対策を選択することができる。
|
キーワード |
水稲、高温障害対策、用水管理、連携
|
背景・ねらい |
近年、高温障害による米の品質低下が問題となっている。その対策として、品種や栽培技術の観点から様々な方法が、農業改良普及センターなどの農業普及側から農家へ指導されているが、その中には、遅植えや掛け流し灌漑など、灌漑期間や用水量を変化させるものがある。しかしながら、農業用水の供給には水利権や水利施設による制約があり、高温障害対策による用水需要の変化に充分に対応できないことが多い。農水省の調査によれば、2007年に高温障害が発生した土地改良区107地区のうち、69地区では、水利権や水利施設の制約等から充分な用水を供給することが困難であった。そこで、農業普及側と用水供給側が連携して、用水の供給可能量を考慮した適切な営農指導をするための、水稲の高温障害対策と両立できる用水管理の調整手法を提案する。
|
成果の内容・特徴 |
- これまで提案されている高温障害対策の中から、用水需要に影響を及ぼす可能性のあるものを取り出し、共有すべき情報として技術の内容と用水需要への影響を整理した(表1)。特に、掛け流し灌漑は、気温より温度の低い用水を充分に供給できる場合に高温障害対策として効果が高いとされているが、大きな用水需要を発生させる。
- 農業普及側と用水供給側が連携する、水稲の高温障害対策と両立できる用水管理の調整手法を図1に示す。まず、農業普及側が表1の高温障害対策のうち当該地域に適したものを提案し、用水供給側がそれに対する用水供給の可否を検討する。用水供給が不可能な場合、農業普及側は次善の対策を提案する。これにより、用水の供給可能量を考慮した、適切な用水管理を選択することができる。
- 用水管理の検討は、表1の予防的技術については作付け前に行い、農業普及側の指導、用水供給側の配水計画に組み込む。対症療法的技術についてはその時の気象条件から高温時に検討を行い、実施の時期など具体的な対応についても協議する。
- 本調整手法を、宮城県亘理・山元地区で実施した事例では、農業普及側は、従来、高温時には掛け流し灌漑を指導していたが、用水供給側との協議により、地区全体での掛け流し灌漑に必要な用水量は水利権水量の約9倍に達し、非現実的であることが明らかとなった。そのため2009年度より、次善の対策として,効果は掛け流し灌漑ほどではないが節水的な対策である、飽水・保水管理を指導することとなった。
|
成果の活用面・留意点 |
- 実際の検討では、農業普及側と用水供給側が情報や意見の交換を密に行う必要があり、そのための協議・連絡体制が重要である。
- 本検討手法は、高温障害対策だけでなく、低温障害対策等、用水需要に大きく影響を及ぼす水管理に関する栽培管理に対しても応用することができる。その際、営農変化に伴う灌漑期間、用水量の変化をあらかじめ整理しておく必要がある。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
カテゴリ |
高温対策
栽培技術
水稲
品種
水管理
|