タイトル |
液状化による変形量予測のための材料パラメータの設定方法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
林田洋一
増川 晋
中嶋(浅野)勇
田頭秀和
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発行年度 |
2009 |
要約 |
液状化層のN値が非常に小さく強度回復のない材料と判断される場合には、簡易に算定される液状化強度と液状化発生後ひずみが急激に増大する材料パラメータを用いた動的有限要素解析によりおおよその沈下量の予測が可能である。
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キーワード |
耐震照査、大規模地震動、液状化、農業用フィルダム、動的有限要素法
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背景・ねらい |
我が国の灌漑を目的とした農業用フィルダム(堤高15m以上)のうち1868~1960年に築造されたものと1867年以前(江戸時代以前)に築造されたとされるものを併せると約千個を数える多数の農業用フィルダムが存在し、これらは液状化に関する科学的知識や設計基準に基づき築造されていない。このような農業用フィルダムの特殊性を考慮すると、大規模地震時に発生する変形量を液状化の発生も含めて詳細に検討できる評価手法の重要性が高いと考えられる。このため、液状化による変形量の予測手法としての動的有限要素解析で留意すべき事項を示す。
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成果の内容・特徴 |
- 地震による液状化発生時に被災した多くの小規模アースダム(堤高15m未満)のうち詳細な土質調査が実施されたもの(図1)を対象に動的有限要素法(解析コード名:LIQCA)による数値解析を実施し以下の知見を得た。なお、当該ため池の液状化層のN値は2程度と非常に軟弱であった。
- 液状化層のN値と細粒分含有率FCから簡易に繰り返し三軸強度比RLを算定する場合、複数の液状化強度曲線が想定される(図2)。また、RLは同一であっても、応力経路や応力-ひずみ関係は大きく異なる可能性がある(図3)。
- 繰り返し三軸試験のシミュレーションにおいて液状化発生後もひずみが有限の大きさにとどまるサイクリックモビリティー現象を示す"Case1"と液状化発生後ひずみが急激に増大する"Case2およびCase3"を比較すると、RLが同じでも堤体沈下予測量は大きく異なる(図4)。凍結サンプリング試料の結果は"Case1"と比べ"Case2および3"に近い(図2)。また、実際に生じた沈下量は1.8mであり、"Case1"と比べ"Case2および3"で計算された値に近い。
- 液状化層のN値とFCから簡易にRLを算定する方法は多くの実績があり、有効な場合もある。しかしながら、動的有限要素法により液状化による変形量を評価する場合には、液状化層のサンプリング試料を用いた繰り返し三軸試験等により応力経路や応力-ひずみ関係を明らかにした上で材料パラメータを設定する必要がある。
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成果の活用面・留意点 |
- 動的有限要素法は用いる解析条件により結果が大きく異なるため、計算結果とあわせ解析条件の妥当性の判断が必要である。また、耐震照査のための判断材料を与える手法の一つであることに十分留意することが重要である。
- 液状化による農業用フィルダムの変形量評価を行うにあたり、上記の留意点を踏まえ、動的有限要素法を有効に活用しレベル2地震動に対する耐震性能照査を行うことが望ましい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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