企業的組織法人における非農家出身従業員への経営継承のポイント

タイトル 企業的組織法人における非農家出身従業員への経営継承のポイント
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2006~2009
研究担当者 迫田登稔
発行年度 2009
要約 企業的組織法人における非農家出身従業員への経営継承にあたっては、(1)創業構成員側の継承方向に対する合意形成と組織内への明示、(2)組織内でのキャリア形成と複数いる従業員からの次期継承者の選定、(3)創業構成員の退職と所有権(出資金)の移譲、がポイントとなる。
キーワード 経営継承、企業的組織法人、従業員、継承ステップ
背景・ねらい 近年、家族農業経営において「第三者継承」の取り組みが進められている。一方、組織法人においては、家族以外の従業員など継承者の選択肢がより広がるといわれるが、その実行事例は限られる。そこには家族経営の「第三者継承」による1対1のマッチングと異なる面の難しさがあり、長期的な視点で従業員を雇用しながら事業展開を図り、次期経営者たりえる人材を内部の組織的なOJTによって育成し、選出する視点がより重要になる。そこで従業員に経営継承を行った事例を基に、企業的組織法人における従業員への経営継承ステップとそこでのポイントを示す。
成果の内容・特徴
  1. A社(図)は、1989年より従業員への経営継承を目標に掲げ、必要な事業展開として稲作経営と農産加工品の製造・販売を進める中、約40名の従業員を採用してきた。そして2007年に県外・非農家出身の従業員3名に経営継承を行った。
  2. A社における経営継承プロセスは、大きく、(1)創業構成員側における経営の将来方向と経営継承方向の決定、(2)継承候補者となる従業員の受け入れ体制の整備、(3)従業員の確保と育成、(4)次期継承者の選定と育成、(5)経営権(意思決定権)の移譲、(6)創業構成員の引退と所有権の移譲完了、のステップに整理できる。
  3. 上記の継承ステップから、組織法人における非農家出身従業員への継承のポイントを示す。
    1. A社では創業構成員間での「会社の将来像と継承方向」に関する合意形成と従業員を募集する前の体制整備を重視している。また継承プロセスの中で、従業員へ継承する姿勢を組織内に明示することを重視し、その一つの手段として定年制(創業構成員の退出時期)と株式会社化(法人の所有権と切り離した意思決定権の移譲)を用いている。
    2. 従業員からの継承者選出を基本に、人材確保の観点から事業部門を新設したり、経営者たる自覚を求めるなど、長期にわたる人材確保の取り組みを継続してきた。次期継承者はいずれも従業員から社内でのキャリアを経て、役員に就任している。また最終的な次期継承者の選出にあたって何を重視するかを創業構成員側が会社の将来像等と照らし合わせて決定することが重要であり、(1)責任感や実行力、(2)先を見る姿勢、(3)変化自体を恐れない性格などを重視した。同時に選出時には全社的に濃密な議論を行い、今後の組織方針と個々の従業員の組織に対する考え方に関する合意形成も重視している。
    3. 経営陣が円滑に交代するには、創業構成員の退職対策も重要であり、期限を設けた経営権や所有権の移譲、長年の経営努力に報いる報酬、退職後の処遇等を組織的に解決する必要がある。また資金力がない、あるいは農地を持たない次期経営者の経営権を確保しつつ、同時に確実に出資金を移譲していくための対策を講じることが重要である。
成果の活用面・留意点
  1. 家族外への経営継承を考える企業的法人において継承計画を立てる上でロールモデルとなる。
  2. 各ステップにおいて必要な期間や方法は、個々のケースによって当然異なる。
  3. 本事例では特に示さないが、一般には地権者など利害関係者との調整も重要となる。
図表1 234088-1.png
カテゴリ 加工 経営管理

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