ブタゲノム塩基配列の概要解読完了

タイトル ブタゲノム塩基配列の概要解読完了
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2006~2009
研究担当者 上西博英
両角岳哉
金森裕之
小川智子
金谷奈保恵
新開浩樹
鈴木恒平
土岐大輔
松田麻衣子
松本敏美
美川亜弓
奥村直彦
神谷梢
栗田加奈子
菊田有
備藤毅人
藤塚奈穂子
山形晴美
発行年度 2009
要約 農業生物資源研究所、米イリノイ大学、英サンガー研究所などの国際研究チームは、ブタゲノムの約98%の概要解読を完了した。DNA情報を用いた良質で病気に強いブタ育種の加速化や、医療用実験モデル動物としてのブタの開発促進に役立つ。
キーワード ゲノム塩基配列、ブタ、国際コンソーシアム、ゲノム育種、モデル動物
背景・ねらい 生産性が高く、食肉としての商品価値の高いブタの育種を進めるためには、肉質や抗病性等の生産上有用な各種の形質を左右する遺伝子を解明しなければならない。そのためには、全ゲノム塩基配列の高精度の情報が必要となる。また、ブタを再生医療や医薬品の前臨床試験等の医学・薬学・生物学分野において有効利用するためには、ゲノム情報をはじめとしたブタの分子生物学的な基盤情報の充実が不可欠である。家畜では、これまでに、ウシやニワトリで全ゲノムのドラフト概要塩基配列が公表されているが、これらと並ぶ食肉生産用家畜であるブタのゲノム塩基配列の全体像はまだ明らかとなっていなかった。
成果の内容・特徴
  1. 米・英・日など12ヶ国・地域が参加して結成された国際ブタゲノムシーケンシングコンソーシアム(SGSC)において、デュロック種ブタ雌個体(図1)を用いたゲノムDNAライブラリー(BACライブラリー)の構築と、このライブラリーを用いた全染色体をカバーする物理地図の作製を行った。
  2. ゲノム物理地図を用いてブタゲノム塩基配列の解読を行った。具体的には、物理地図上に位置づけられたDNA断片(BACクローン)をショットガンシーケンシング法により、同じ部位を4~8回繰り返し解読した。また、全ゲノムDNAを用いたホールゲノムショットガンシーケンシング(WGS)法も併用した。塩基配列解読は、BACクローンを用いたショットガンシーケンシングを、主としてイギリス、米国、オランダ、日本が中心となって行い、WGSをイギリスと韓国が行った。日本では、農業生物資源研究所と(社)農林水産先端技術産業振興センター・農林水産先端技術研究所が、ブタBACクローンの配布元でシーケンシングデータの解析を担当するイギリスのサンガー研究所と共同研究契約を締結し、第6及び第7染色体上に位置する、全ゲノムの約1.6%(約4,230万塩基対)に当たる254個のBACクローンの供与を受け、平均7.92倍に相当する繰り返しでの解読を行った(図2)。なお、ブタの染色体は常染色体18対と性染色体で構成され、ゲノムサイズは全体で約27億塩基対である。
  3. イギリスのサンガー研究所では、塩基配列解読の結果を日本の分も含めて解析して、全ゲノムの概要塩基配列を公開した(Ensembl Genome Browser; http://www.ensembl.org/Sus_scrofa/Info/Index)。今回の概要解読においては、ブタ全ゲノムの約98%の領域が明らかにされた(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. ブタのゲノム塩基配列が明らかとなることにより、肉質、肉量や抗病性に優れたブタ育種の加速化が期待される。特に、本ゲノム解析の結果を、私たちが現在行っている、ゲノムから転写される遺伝子の配列を網羅的に明らかにする試みと合わせることで、ブタの様々な優れた形質を支配する遺伝子の解明に寄与することが期待される。
  2. 医療分野におけるブタの実験動物としての有用性も飛躍的に高まるものと考えられる。ブタ発現遺伝子の全長解読では、これまでに19,000個以上の遺伝子配列の公開を行った。全長解読は現在も精力的に継続しており、この情報は今回概要解読が行われたゲノム配列に遺伝子の配置などの情報を付与するのに非常に有用となると考えられる。
図表1 234189-1.png
図表2 234189-2.png
図表3 234189-3.png
図表4 234189-4.png
カテゴリ 育種 ゲノム育種

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