タイトル |
ハタ類養殖のマダイイリドウイルス病対策 |
担当機関 |
沖縄県水産海洋研究センター |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
中村博幸
知名真智子
(財)阪大微生物病研究会
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発行年度 |
2009 |
要約 |
沖縄県のハタ類養殖で大きな問題となっているマダイイリドウイルス病の疾病対策試験を実施した。その結果、魚体重5~50gのヤイトハタ及びチャイロマルハタにイリド不活化ワクチン0.1mL/尾を投与(腹腔内注射)することで、マダイイリドウイルス病による死亡被害を軽減できることが分かった。
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背景・ねらい |
沖縄県では、ヤイトハタやチャイロマルハタの養殖技術開発に取り組んでおり、平成9年からはヤイトハタの養殖が本格的に行われている。しかし、マダイイリドウイルス病(以下、「イリドウイルス病」)による死亡被害のため生産額は伸び悩んでおり、予防技術の確立が強く望まれていた。そこで、両種のイリドウイルス病対策のため、イリド不活化ワクチン(以下、「ワクチン」)を用いた予防対策試験を実施した。
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成果の内容・特徴 |
- ワクチンを両種(魚体重約5g)の腹腔内に0.1mL投与し、10日後にイリドウイルス(愛媛マダイ株)の注射攻撃を行った。その結果、ワクチン区の死亡率は0%であったのに対し、対照区は60~70%の死亡率であった(図1、2)。なお、魚体重別に同様の試験を行った結果、魚体重5~50gでワクチンの有効性が確認された。
- 県内の養殖ヤイトハタ及びチャイロマルハタから採取されたイリドウイルス(OT株)の塩基配列は、日本各地で採取されたイリドウイルスと非常に高い相同性を有することがわかった(表1)。さらに、OT株に対するワクチンの有効性も確認した。
- 沖縄県本部町地先で行ったヤイトハタの臨床試験において、イリドウイルス病の自然感染による死亡状況を観察した。その結果、対照区でイリドウイルス病による死亡が確認されたが、ワクチン投与区での死亡は無く、ワクチンの有効性が確認された。さらに、摂餌不良や異常遊泳等は観察されず、安全性についても問題ないことが分かった(表2)。チャイロマルハタの臨床試験では、イリドウイルス病の感染は観察されず、ヤイトハタ同様、安全性に問題ないことが確認された。
- これらの結果から、両種(魚体重5~50g)に対してワクチン0.1mL/尾を腹腔内投与することで、イリドウイルス病の被害を軽減できることが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
- ヤイトハタについては、平成21年1月20日付けで農林水産大臣からワクチンの使用が承認され、現在、生産者等に対し普及活動を行っている。
- チャイロマルハタに対するワクチンの使用承認は、今年度中に取得見込みである。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
予防技術
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