発芽期に冠水処理を行った大豆の根端のタンパク質発現量と代謝産物量の変動

タイトル 発芽期に冠水処理を行った大豆の根端のタンパク質発現量と代謝産物量の変動
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 中村卓司
杉本百合恵
島村 聡
平賀 勧
藤郷 誠
南條洋平
西澤けいと
小松節子
発行年度 2010
要約 発芽期に冠水処理を行った大豆の根端では嫌気呼吸やGABA蓄積経路だけでなく、尿素回路やTCA回路からオキサロ酢酸経由でPEPに代謝される経路等の代謝活動も活発化する。
キーワード 大豆、発芽、湿害、冠水処理、プロテーム解析、メタボローム解析
背景・ねらい わが国では発芽期の湿害が大豆生産の大きな不安定要因となっている。大豆は冠水により根の伸長が抑制され、特に根端での障害が顕著である。その結果、発芽不良となり湿害を受ける。冠水環境下での大豆幼根端における障害の生理機構を明らかにするために、タンパク質発現量と代謝産物量の変動について解析する。本研究では発芽期に湿害ストレスとして冠水処理を行い、大豆の根端についてプロテオーム解析およびメタボローム解析を行い、発芽期の根端への冠水による障害の代謝応答について基礎的情報を得る。
成果の内容・特徴
  1. 大豆品種「エンレイ」を用いて播種後2日目から2日間冠水処理を行った後の幼根の根端では、44個のタンパク質が無処理に対して2倍以上の発現量の変化を示す。プロテアーゼ関連のタンパク質、ストレス誘導タンパク質、微小管形成に関わるタンパク質、および細胞壁形成に関わるタンパク質の発現量は無処理に対して減少し、一次代謝関連のタンパク質であるホスホフルクトキナーゼ、フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ウレアーゼ、ウリカーゼ、アルコール脱水素酵素などの発現量は冠水処理により増加する(図1)。
  2. 同様の処理に伴い、92種類のイオン性代謝産物を同定し、エネルギー生産等に関連する嫌気呼吸やGABA蓄積経路等のアラニン、乳酸、GABAやホスホエノールピルビン酸等の相対代謝産物量が増加する(図1)。さらに尿素回路のオルニチン、シトルリン、アルギニン等の相対代謝産物量も増加する。
  3. 根端では冠水処理により窒素利用効率等に関連する尿素回路の代謝活動が活発化し、さらに、TCA回路からオキサロ酢酸経由でPEPに代謝される経路も大きく影響される (図1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で大豆の栽培は、砂耕を用い、温度は25℃で、光条件は600µmol m-2s-1 (明期:12時間/日)である。根端の採取は、根の先端から5-10mmまでとした。
  2. 大豆の冠水ストレス下の嫌気環境における代謝応答として情報を提供でき、今後の湿害にともなう遺伝子発現調節の研究等にも活用できる。
図表1 234416-1.png
カテゴリ 湿害 大豆 播種 発芽不良 光条件 品種 メタボローム解析

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